マイケルジャクソンのビートイットは「命を大事に」という優しさ

こんにちは。あおありです。

この記事ではマイケルジャクソンのビートイット(原題:Beat It)について解説します。

ビートイットは聞いたことある!

パワフルでかっこいい系だよね♪

あおあり
あおあり

そうだね!

でも実はマイケルの深い優しさが込められた曲でもあるんだ。

Beat Itは1983年に発売されたアルバム「スリラー」に収録されている、マイケルの曲の中でも有名なロックナンバーです。

「ビレーーー!ビレーーー!」という力強いキャッチーなメロディーは、ファンでなくても聞いたことある人が多いのではないでしょうか。

指を鳴らしながら前に進む振り付けも有名で、フラッシュモブ(道を歩く人たちが突然一斉に踊り出すイベント)の定番曲でもあります。

多くの人に愛されるBeat Itですが、この曲に込められたメッセージを知っている人は少ないかもしれません。

ビートイットのメッセージ

怖いトラブルに巻き込まれそうになったら、すぐ逃げて!

Beat Itは、マイケルが子供や若者たちに向けて、「自分の命を大切にしよう」というメッセージを伝えている曲です。

この記事では、

  • Beat Itに込められたメッセージ
  • Beat Itのクールなサウンドが生まれた過程
  • ライブでマイケルとファンがサイコーに盛り上がる仕掛け
  • ニューヨークで絶賛公演中の“MJ Musical”オープニング

について書いています。

この記事で分かること
  • ビートイットは怖いトラブルに巻き込まれそうになったらすぐに逃げろ!」というメッセージソング
  • マイケルが作曲。リズムギターを弾いたのはスティーヴ・ルカサーで、ギターソロを弾いたのはエドワード・ヴァン・ヘイレン
  • ライブパフォーマンスにはマジック、スモーク、ギターソロ、ミュージカル風のダンスシーンなど、マイケルとファンが盛り上がる要素がいっぱい!
  • ビートイットはニューヨークで絶賛公演中“MJ the Musical”のオープニングナンバー(なんとYoutubeで視聴可能♪)

「身の安全を守るために、逃げろ」というビートイットのメッセージ

Beat Itを聞くと、誰もがアップテンポで、エネルギッシュで、かっこいい、イケイケな印象を受けるはずです。

しかし、歌詞は「逃げろ!」という意味で、意外性があります。

これは一体どういう意味なのでしょうか?マイケルはどうしてこんな歌を作ったのでしょうか?

詳しく書いていきます。

“Beat It”は「逃げろ」という意味

曲のタイトル “Beat It” は、英語で「出ていけ」「失せろ」「どっかいけ」という、やや乱暴な言葉です。

“beat”は「叩く」という意味なので、「叩け」とか「殴ったれ」という意味だと思っている人がいるかもしれませんが、全く逆の意味です。

歌詞の内容の要約は以下の通りです。

「君たちはカッコつけたいだろう。自分を強く見せて、ワルになりたいこともあるだろう。

でも、死んでしまったら何もかもおしまいなんだ。だから危ない時は何も考えず逃げろ!

実際の歌詞を抜粋します。

You better run, you better do what you can
Don’t wanna see no blood, don’t be a macho man
You wanna be tough, better do what you can
So beat it, but you wanna be bad

君は逃げたほうがいい できることをしたほうがいい
血は見たくない 屈強な男にならなくていいんだ
君は強くなりたいのなら できることをしたほうがいい
さあ、逃げるんだ
でも君はワルになりたいんだな

(中略)

It doesn’t matter who’s wrong or right
Just beat it 

誰が正しくて誰が間違っているかなんて関係ないんだ
今すぐ逃げろ

Beat Itの歌詞より

マイケルは、自伝「ムーンウォーク」で、Beat Itのメッセージについてさらに詳しく語っています。

The lyrics of “Beat It” express something I would do if I were in trouble. Its message—that we should abhor violence—is something I believe deeply. It tells kids to be smart and avoid trouble.

Beat Itの歌詞は、もし僕が困った状況になったらこうするだろうっていうことを表現している。
みんな暴力を嫌がるべきだっていうメッセージを、僕は強く信じている。
子供たちに、賢くなって、トラブルを避けるように伝える歌だよ。

If you fight and get killed, you’ve gained nothing and lost everything. You’re the loser, and so are the people who love you. That’s what “Beat It” is supposed to get across. To me true bravery is settling differences without a fight and having the wisdom to make that solution possible.

もし喧嘩して殺されたら、何も得られないどころか全てを失ってしまう
君も、君を愛する人たちも負けてしまうんだ。それをBeat Itで理解してもらおうとしている。
真の勇気とは、喧嘩をせずにもめ事を解決して、解決策を実現できるような知恵をもつことだと僕は考えている。

Michael Jackson – MOONWALK

Beat Itは、「暴力反対」「みんな命を大事に」というマイケルの意見を反映させた曲なのですね。

飲酒運転防止CMに起用、レーガン大統領から表彰される

Beat Itは、アメリカの交通局が制作した「飲酒運転防止を訴えるCM」のテーマソングに選ばれました。

「飲酒運転はやめて」1983年アメリカのCM

このCMはかなりシリアスでショッキングです。

数人の若者が車に乗り込み、「ちょっとビール飲んだだけだから」と答えたドライバーがエンジンをつけると、次の瞬間全員が骸骨になってしまいます。

最後に、「飲酒運転は友人関係を殺してしまうかもしれない」というメッセージが表示されます。

このCMがきっかけでマイケルは、1984年5月に当時の大統領であるレーガン大統領から表彰されました。

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レーガン大統領のスピーチ

レーガン大統領は“PYT” “Off The Wall” “I Want You Back”といったマイケルの曲名をさりげなく織り交ぜたスピーチで、「マイケルは若者達にお手本を示してくれた」という賛辞を送り、表彰状を渡しました。

ハードなサウンドとソフトなメッセージのギャップ

Beat Itは、攻撃的で反社会的なイメージのロックミュージックに、「身の安全が一番」というギャップのあるメッセージを合わせた、キャッチーかつ奥ゆかしい曲です。

マイケルは、スリラーに収録するロックナンバーを作るにあたって、「当時のロックチャートにランクインしている曲と違うものを作りたかった」と自伝ムーンウォークで語っています。

このような「ハードな見た目とソフトな中身のギャップ」はミュージックビデオでも見られます。

Beat Itのミュージックビデオ

ミュージックビデオのストーリーは最後に意外な展開が!

Beat Itのミュージックビデオは、ギャング達が夜の街をたむろするシーンで始まります。

じわじわと2つのグループが近づき、ボスらしき2人(白人と黒人)がナイフを持って決闘を始めます。

あおあり
あおあり

一生出会いたくない現場だね!

しかし、ラストシーンでストーリーは一転します。

突然現れたマイケルが2人の肩にそっと触れ、間に入り込んで踊り出すと、その場にいるみんなが一斉に踊り、楽しく終わります。

ラストシーンの直前までギャング映画のような雰囲気に見せかけて、最後の最後に楽しく終わる意外性が面白いですね。

マイケルは実生活でも血みどろの喧嘩を止めにいった逸話があります。

(マイケル公式サイト記事の要約)

1997年10月、マイケルは南アフリカの「ワニの民」という部族の名誉メンバーに選ばれた。

式典へ迎う途中、道で血を流して喧嘩する2人の男性を見つけた。

マイケルはどうして争っているのか聞くために近づいた。

2人は驚いて喧嘩をやめた。

マイケルの優しさはTシャツの柄にも表現されていた

Beat Itのファッションは、真っ赤なジャケットが印象的です。

華やかでカッコよくて、マイケルによく似合っていますね。

でも、ジャケットだけでなくTシャツのデザインにもご注目です。

ビデオではマイケルの動きが激しすぎて見づらいですが、かっこいい赤ジャケットの下に、とっても可愛い柄のTシャツを着ているんです。

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ミュージックビデオの後半で、中央に大きく描かれたハートの周りにたくさん天使が寄ってきているデザインのTシャツを着ています。

あおあり
あおあり

“amour”(フランス語で「愛」)の文字もあるね

ビデオ前半のベッドルームに居るシーンでは、鍵盤と音符柄の、これまた可愛いTシャツを着ています。

一見派手で攻撃的に見えるマイケルのファッションにも、平和を願う気持ちが内側に隠れていました。

ビートイットのロックなサウンドは、マイケルの声から始まった

Beat Itはマイケルが作詞作曲した曲です。

「アルバム”スリラー”にロックナンバーを入れたい」とクインシーが言っていたこともあり、マイケルはこっそり1人でBeat Itを作曲していました。

「気に入られなかったらどうしよう」と思ってなかなか披露できなかったマイケルですが、何か隠してるなと勘づいたクインシーに催促されて、めでたく披露されました。

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始めはマイケルの声だけでデモが制作され、多くのアーティスト達の手により、完成版の強くてハードなサウンドが生まれました。

全てマイケルの声で収録されたデモバージョン

アルバムThis Is Itの初回限定版に、Beat Itのデモ音源が収録されています。

デモ音源は完成版と全然違う雰囲気で、「マイケルの曲はこんな風に作られていったのだな」と想像できる貴重な音源です。

現在は配信サイトなどで視聴可能です。

Beat It デモ音源の特徴
  • 楽器の音もマイケルの声で表現されている
  • サビ以外の歌詞が未定
  • サビのコーラスが美しくて幻想的

デモ音源にも色々なタイプがある中、Beat Itのデモは楽器の音も含めて全てマイケルの声で収録されている点が特徴的です。

前半は、フワッとしたハミングの後ろでしっかりとベースの音が聞こえます。

ベースの音はマイケルが作ったのですね。

サビになると一転、美しいコーラスに変わります。完成版のエネルギッシュな感じとは印象が違います。ハーモニーがとても綺麗でずっと聞いていたい気分になります。

Beat Itのデモバージョンは、完成版とはまた違う良さがあるので、聞き比べると面白いです。

印象的なギターリフはTOTOのスティーヴ・ルカサーが演奏

多くのリスナーの耳に残っているBeat Itの力強いギターリフを弾いているのは、TOTOの中心的メンバーであるスティーヴ・ルカサーです。

TOTOはアメリカのロックバンドで、1976年から、メンバーが入れ替わりながら現在も活動中です。

Beat Itで自分が演奏したパートを紹介するスティーヴ・ルカサー

エドワード・ヴァン・ヘイレンが弾いたギターソロ

間奏の、疾走感のあるかっこいいギターソロを担当したのはエドワード・ヴァン・ヘイレンです。

スタジオに着いて、たったの2テイクで収録し、なぜかノーギャラ、しかも最初はクレジット表記されなかったという信じられないエピソードがあります。

エドワードは収録前にBeat Itの音源をあらかじめ聞いて、演奏内容を考えてきました。

あまり自信がなく、「曲をめちゃくちゃにした!と怒られるかもしれない」と思っていたそうです。

ダイナミックなギターソロを聞いたマイケルは、エドワードへ最大限の賞賛を送りました。

ワオ!情熱を注いでくれて本当にありがとう…この曲についてちゃんと考えて、もっといい曲にしてくれたんだね。

マイケルがエドワードへ送った言葉

ちなみに、ギターソロが始まる前のコンコンコン!という音は、マイケルがドラムケースを叩く音です。

ビートイットはライブでも仕掛けがいっぱい!

ビートイットのライブはマイケルと観客が毎回テンション上がりまくる鉄板ソングです。

ただ歌って踊るだけでも十分盛り上がりそうですが、さらにエキサイティングなパフォーマンスになる仕掛けがたくさんあります。

ビートイットライブの見どころ

  • 登場シーン

    前の曲のラスト、マイケルがマジックでステージから姿を消す。

    どこにいるの?と言っている間に客席後方からクレーンにのって登場。

    赤ジャケットと黒マントをはおり、下からスモークと風を受けて、観客と一緒に「はーお!!」とシャウト

  • 女性ギタリストのソロ

    間奏のソロは華やかな女性ギタリストが演奏することが多い。

    マイケルも後ろから応援。

  • ミュージカル風の群舞

    ミュージックビデオと同じように、ダンサーたちが決闘を始まる。

    マイケルは歌いながら彼らをなだめて、一緒にいつものダンスをする。

  • ジャンプしてジタバタする

    歌い終わっても興奮はおさまらない!

    みんなで何度もジャンプして、最後には床に転がって「買ってくれないと帰らない〜」って言ってるみたいにジタバタする。

ビートイットのライブは仕掛けが盛りだくさんですね!

ライブの演出に関して、「登場シーン」「ギターソロ」「This Is Itの演出プラン」について詳しく書いていきます。

11秒で着替えながら客席後方へ大移動してシャウトしながら登場

ワールドツアーでは、ビートイットが始まる前の曲で、マイケルはマジックでステージから姿を消します。

あれ?どこに行ったの?と思った瞬間、間髪いれずに客席後方からクレーンに乗ったマイケルが「はーお!!」と叫びながら登場します。

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赤ジャケットと黒マントを羽織り、下から風とスモークが吹き付けてとても華やかです。

マイケルも観客もテンションMAXでとっても盛り上がるシーンです。

マイケル公式Youtubeで公開されているバッドツアー、デンジャラスツアーの動画でも視聴できます。

リンク Badツアー ウェンブリー公演 (Youtube動画)Beat Itは1時間23分ごろから

リンク Dangerousツアー ブカレスト公演 (Youtube動画) Beat Itは1時間13分ごろから

この登場シーンの裏側は、King Of Styleというマイケルのスタイリストの著書で詳しく解説されています。

瞬時にバラバラになって脱げるように作られた衣装を脱ぎ捨てながら大急ぎで移動してて、本当に大変だったことが伝わります。

マイケルが乗っているクレーンは、映画This Is It「チェリーピッカー」と言われています。

This Is ItのBeat Itシーンの前に、マイケルがチェリーピッカーに乗ってとても嬉しそうにしているシーンが見られます。

あおあり
あおあり

「もっと高くしてよ」ってスタッフに要求してるのが可愛い。

ギターソロは女性が担当することが多い

Beat Itは男臭いイメージの曲ですが、ライブでは女性がギターソロを担当することが多いです。

マイケルの3つのワールドツアー(Badツアー、Dangerousツアー、HIStoryツアー)でギターソロを担当していたのは、ジャニファー・バトゥンという方です。

毎回派手なファッションで存在感抜群でした。マイケルに10年以上起用されていたので、とても好かれていたのでしょう。

This Is Itのギターソロ奏者には、オリアンティ・パナガリスが選ばれました。

オリアンティはお人形さんみたいに可愛いルックスから繰り出されるイカツい音と、スーパーテクニックが印象的な方で、現在も大活躍のギタリストです。

This Is Itで、ビートイットのジャケットを燃やそうとしていた?

映画This Is Itでは、Beat Itのラストシーンでジャケットをステージ中央に投げて、自動発火させることを想定しています。

マイケルは「ジャケットが燃える!」と床を指差して言っています。

マイケルの頭の中ではこの演出が決定していたようです。

しかし、安全性、ジャケットの耐火性、合法性などが課題となり、実現できたかどうかは不明です。

マイケルブッシュの著書King Of Styleで、適性なジャケットの素材を探し回った過程が書かれています。

NYで絶賛公演中“MJ the Musical”のビートイットがYoutubeで公開中!

2022年現在、ニューヨークのブロードウェーで、マイケルジャクソンの半生を描いたミュージカルMJ the Musical」が絶賛公演中です。

Beat Itは、公演の一番最初に披露される曲です。

ニューヨークでしか見られない公演ですが、なんとBeat ItのシーンはYoutubeで公開されています!

MJ the Musicalより “Beat It”

ミュージカルではリハーサル中のシーンで使用され、ジャズダンスやコンテンポラリーダンス風のおしゃれな振り付けです。

あおあり
あおあり

個人的に好きなダンススタイルで、イントロが特に素敵!

残念ながら私は当分見に行けそうにありませんが、見に行かれた方は是非感想を教えてください♪

まとめ

Beat Itに込められた優しくて深いメッセージ、Beat Itのサウンドが作られる過程ライブの演出、ニューヨークで絶賛公演中の“MJ the Musical”オープニングについて書きました。

Beat Itは「怖いトラブルに巻き込まれそうになったらすぐ逃げろ!」という歌です。

若者たちの安全を願うマイケルの優しさが少しでも多くの人に届くことを願っています。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

参考資料

1990年生まれ。マイケルファン歴20年ほど。
もはや彼が脳内に住んでいる。
NHK BSのテレビ番組「熱中夜話 マイケルジャクソンナイト」にファンの1人として出演した経歴あり。
ファンの方も、そうでない方も楽しんでもらえる記事を書きたいです。

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