こんにちは。あおありです。
この記事では、1991年にマイケル・ジャクソンが発表したアルバム「Dangerous(デンジャラス)」のジャケット(アートワーク)について考察します。
※「ジャケット」「ジャケ写」「CDジャケット」「ジャケットスリーブ」などの呼び方がありますが、この記事では「アートワーク」という呼び方に統一します。
マーク・ライデンが制作したDangerousのアートワークはディテールに富んでおり、ゴージャス&ミステリアスでとても魅力的です。
そう思う人も多いのでは?
作者のライデン氏もマイケルも、このアートワークについて明確な「種明かし」を避けており、見る人が自由に解釈できる余白を持たせています。
「自由に解釈してよい」とは言っても、何人かのファンや評論家の意見を読むと「なるほどそういうことだったのか!」と新しい発見が得られます。
Dangerousのアートワークには、西洋の歴史や芸術と密接に関わっているパーツが多々あり、日本人には分かりにくいかもしれません。
しかし、よく調べてみたら「たしかに見たことある!聞いたことある!」と納得することがたくさん出てきました。
この記事では、日本人にも分かりやすくて詳しい補足情報と、私個人の意見も含めて、ざっくりとDangerousのアートワークを考察します。
デンジャラスのアートワーク:基本情報
作者 | マーク・ライデン (公式サイト) |
制作期間 | 6ヶ月 |
大きさ | 3平方フィート (約53cm四方) |
画材 | アクリル絵の具 |
作者のマーク・ライデンは1963年アメリカ生まれ、今でも現役で大活躍している芸術家です。
彼の作品は、とても鮮烈で、可愛らしく、繊細であると同時に、不気味で風刺的な面がある…というのが私の印象です。
セレブのファンも多く、歌手のケイティ・ペリーは彼のファンを公言しています。
2010年に歌手のレディー・ガガが生肉に身を包んだ「ミート・ドレス」姿を披露して話題になりました。
このファッションも、ライデン氏が2009年に発表した絵を参考にしていると考えられます。
参考記事 レディーガガの生肉ドレスとポップシュルレアリスムの父マークライデンの意外な関係
マイケルにマーク・ライデンを紹介したのは、ソニーのアート・ディレクター、ナンシー・ドナルドです。
彼女はThrillerからInvincibleまで、マイケルが発表したアルバムのアートワークに関わっています。
華やかさと奥行きを感じる全体像
全体的に、サーカスとヨーロッパ王室を連想させる豪華絢爛な世界観です。
派手でありながら統一性、上品さもあり、均整がとれているところが素晴らしいです。
この非現実的な華やかさは、マイケルが一生を過ごしたショービジネス業界を示唆していると考えられます。
アートワークでは、マイケルの顔が仮面で覆われているように見えます。他にも、小さい頃のマイケルが小船に乗っていたり、スリラー期のマイケルが壁に彫り込まれています。
いずれにせよ、マイケルはこの絵の中に閉じ込められているように見えませんか?
マイケルは物心ついた時から超有名人で、普通の生活を送ることが困難でした。
「生涯ショービジネスの世界に閉じ込められる」彼の運命を風刺しているのかもしれません。
マイケル自身が決めた方針
マーク・ライデン氏のインスタグラム投稿によると、マイケルはこのアートワークを依頼するにあたり、以下の指示を出したそうです。
- マイケルの目に焦点を当てること
- 危機に陥った地球を見せること
- 子供たちと動物たちを描くこと
- 怖い感じになったとしても、楽しい絵にすること
マイケル自身が、アートワークの重要な方針を決めていたのです。
インスパイアを受けた作品3つ
Dangerousのアートワークと全体的に共通点がある作品、インスピレーションを与えたと考えられる作品を3つ紹介します。
Leave Me Aloneのミュージックビデオ
Leave Me Aloneはマイケルの前作「Bad」に収録された楽曲です。
作者のライデン氏は「Leave Me Aloneのビデオが大好きで影響を受けた。」とインタビューで語っています。
- 遊園地のアトラクション
- 動物がたくさん出てくる(縮尺がいびつ、擬人化されていたり、架空の生物もいる)
- サーカス
- さまざまなイメージを切り貼りした構造
これらの点がDangerousのアートワークと共通しています。
前作のラストソング「Leave Me Alone」のビデオが次作のアートワークにつながっていると思うと胸熱
中世の名作「快楽の園」
ルネッサンス時代に描かれた「快楽の園」という名画もデンジャラスのアートワークに大きな影響を与えています。
パッと見の共通点が多いだけでなく、「裸の男女が中に入った透明な球」がほぼそのまま引用されているため、意識しているのは確実です。
- 全面に派手、カラフル
- 細かくて写実的な描写
- ややのっぺりしているタッチ
- 擬人化され縮尺のいびつな動物たちが多数出てくる
- シュールな感じ
「快楽の園」は、一見美しい風景を描いているように見えますが、良くみると堕落した人間の姿を生々しく描く、ゾッとするような絵です。
デンジャラスのアートワークはそこまで恐ろしい描写はありませんが、地球の危機や人間の過ちを示唆する描写があります。
そして、あまりにも派手で入り組んだ装飾は、尽きることのない人間の欲望を暗喩しているのかもしれません。
イッツ・ア・スモール・ワールド(※個人の見解)
個人的には、ディズニーランドのアトラクション「イッツ・ア・スモール・ワールド」もデンジャラスのアートワークと共通点が多いと感じます。
- 細かくてバリエーション豊富な装飾がほどこされた壁面
- 独特で鮮やかな色彩デザイン(ディズニー映画「不思議の国のアリス」などを手がけたメアリー・ブレアが監督した)
- あらゆる人種と動物が集うユートピア的なイメージ
- なぞの数字
「私たちは分かり合える。世界は一つになれる。」というスモールワールドのメッセージと、マイケルのメッセージには通じるものがあります。
マイケルもお気に入りのアトラクションだったのではないでしょうか。
派手な外観と秘められた内面
デンジャラスのアートワークは、きらびやかな外観で私たちを魅了すると同時に、その奥の謎めいた世界への想像をかき立てます。
- 中央上の、目の周りしか見えないマイケル
- 中央下の、Dangerousゲートの奥にある謎の工場と、上下逆さまの地球
- 左下が入り口、右下が出口のアトラクションのような乗り物
これらの描写が「扉の奥の世界」を暗示し、「アルバムを聞くと、秘密の世界が楽しめるよ」というメッセージに感じられます。
外から眺めるだけでも楽しいけど、中の世界に足を踏み入れれば、本当のお楽しみが待っている
これはマイケルの作品全体にあてはまることですね。
仮面の奥からこちらをのぞくマイケル
正面に鋭い視線を向けるマイケルの目は、アルバム「Bad」のアートワークと似ており、これを参考にしたと言われています。
気づいたらずっと見つめ合ってしまう、魅力的な眼差しですね。
目の周り以外は完全におおわれ、顔や体が見れないところが他作品のアートワークとの大きな違いです。
工場と逆さまの地球は文明の行く末?
中央下から続く道の先に、暗い工場のようなものと、逆さまになった地球が見えます。
道には以下のようなモチーフが描かれています。
- 工場
- ピストル
- ドクロ
- 月と星
- ロケット
- 分子構造
これらのモチーフは、科学の発達の二面性を表現しているのかもしれません。
ロケットで宇宙まで到達することができた反面、恐ろしい大量殺人兵器が生まれてしまったというように。
工場の中央には、上下逆さまになった地球が固定されています。産業の発達と同時に表在化した、地球の危機を示唆しているのでしょうか。
奥に広がる工場は、「リズムの工場」のようなDangerousの収録曲、「ヒットソングの生産工場」であるマイケル自身を示しているようにも見えます。
冒険の先に待つ発見
左下から右下にかけての描写は、アトラクションに乗って冒険に出かけ、新たな発見を得たというストーリーを表現しているようです。
左下の小さな船に乗った動物たちは海賊マーク🏴☠️のゲートをくぐります。
ディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊」を連想するモチーフで、ワクワクする冒険の世界を予感させます。
右下の出口のゲートには、目のマークが描かれています。
これは、キリスト教の文化圏で用いられるシンボル「プロビデンスの目」のようです。
「プロビデンスの目」は神の全能の目を意味し、全てを見通す力を持っているとされます。
アルバム「Dangerous」には、これまでにない刺激的なサウンドと、強いメッセージが詰まっています。
エンタメとして楽しめると同時に、課題が山積みの世界情勢や、人間の複雑な心の有り様まで幅広く表現した挑戦的な内容です。
ワクワクしながら再生ボタンを押し、壮大な旅を経て、最後には全く違う自分に生まれ変わって帰ってくる
そんな視聴体験を表しているのかもしれません。
動物たちの世界
Dangerousのアートワークには、たくさんの動物たちが登場します。
- 小さい動物が大きく描かれるなど、縮尺がゆがんでいる
- 人間のような動作をしたり、衣装を着ている
などの表現がユニークです。
マイケルは動物が大好きで、チンパンジーのバブルス君をはじめ、多くのめずらしいペットを飼っていました。
さらに、世界中で危機に瀕している動物たちの保護を求めて、熱心に訴えてきました。
Dangerousのアートワークで描かれる動物たちのなかで、ひときわマイケルの思い入れが強そうな動物たちを紹介します。
ゾウ🐘
- ピエロを乗せて、サーカスで見せ物にされるゾウ(上部の両脇)
- 象牙のために密猟される野生のゾウ(中央右より)
- 左下の、小舟にのってゲートをくぐるゾウ
Dangerousのアートワークにはこの3種類のゾウが描かれています。
マイケルは、賢く、忍耐強く、愛情深いゾウたちにリスペクトを感じていました。
Dangerousと同時期に発売されたマイケルの詩集「Dancing The Dream」の中には「So The Elephants March」という、ゾウを題材にした詩が収録されています。
Dangerousより後に発表されたアルバム「HIStory」収録の「Earth Song」のミュージックビデオでは、象牙を得るために密猟されるゾウが登場します。
自宅ネバーランドでゾウを飼っており、来場者を楽しませたこともありました。
- サバンナの覇者であるたくましいゾウ
- 密猟の犠牲となるゾウ
- 人に飼いなられ、見せものになるゾウ
- 文化によっては神様としてあがめられるゾウ
おなじ生き物でも人間によって運命が翻弄され、さまざまな意味を持ちます。
クジャク🦚
アートワークの中央で、華やかな羽を大きく広げるクジャクの姿は印象的です。
マイケルにとってクジャクは単に「美しい動物」というだけではありません。
重要なのは、クジャクの羽には全ての色が含まれている。だからこそ美しいという事実です。
クジャクは、マイケルの「全てのジャンルを取り込んでいく」音楽作り、そして「世界を一つにする」という人生哲学の象徴です。
マイケルと兄弟たちは、自分たちの会社を「ピーコック・プロダクション」と名付け、彼ら自身の象徴としてクジャクモチーフを多用しました。(※ピーコック:クジャクという意味)
マイケルは自伝「ムーンウォーク」で、クジャクに対する思いを語っています。
- クジャクは愛を感じているときだけ、羽を広げ、そして全ての色が輝くという記事を読んでワクワクした。これが自分達の求めているイメージだと感じた。
- 世界中でパフォーマンスをして「音楽に人種はない」と感じた。
- 音楽を通して全ての人種を一つにしようと思っている。
参考記事 Michael Jackson – On The Use Of Peacock
鮮やかな色彩で私たちを魅了するクジャクは、1曲ごとに異なる表情を見せるDangerousのイメージにピッタリですね。
チンパンジー🐒(バブルス君?)
Embed from Getty Imagesあらゆるところに登場するチンパンジーの姿も印象的です。
- 中央上(マイケルの目の上)
- 中央のゲートの両脇
- 左下のトロッコ
合計4回登場しています。
マイケルのお気に入りのペット「バブルス君」をイメージしているのでしょう。
黒いネズミ🐀は映画「ベン」のオマージュ?
左下の小舟に乗っているネズミは、1972年に公開された映画「ベン」に登場するネズミによく似ています。
マイケルは本作の主題歌「ベンのテーマ」を歌っており、ソロアーティストとしての実力を世に見せつけました。
この主題歌は「ネズミと少年の友情」というユニークすぎるテーマにも関わらず、当時14歳だったマイケルの切なくて美しい歌声に多くの人が感動しました。
マイケルは映画で描かれた「動物と心を通わせる孤独な少年」に自分の心を重ねていたのかもしれません。
「ベンのテーマ」で、マイケルはアイドルグループだけでなくソロ歌手としても活躍できることを証明し、彼のキャリアを飛躍させました。
ハチ🐝(作者の趣味?)
中央上の、象の横にいるやたらと大きなハチ🐝 気になりませんか?
これはマイケルにとって大きな意味はなく、作者の趣味かもしれません。
マイケルがハチについて話している場面は思い出せませんが、作者のマーク・ライデン氏の作品にはハチのモチーフが頻繁に登場します。
参考 Bunnies & Bees(マークライデン公式サイトより「ウサギとハチ」シリーズ)
ライデン氏がどうしてハチさんを描きつづけるのか、気になります。
世界の名作との関連
Dangerousのアートワークには、歴史上有名な芸術作品のオマージュが含まれています。
その一部をご紹介しましょう。
ヴィーナスの誕生
貝殻の上でちょっとはずかしそうなポーズをする美しい女性…
ボッティチェリ作「ヴィーナスの誕生」はとても有名で、あらゆるところで引用、もしくはパロディーされていますね。
左側の玉座につく「イヌの王」の右下に、「ヴィーナスの誕生」のオマージュが見られます。
快楽の園
Dangerousのアートワークと全体的に近い雰囲気をもつ、ヒエロニムス・ボス作「快楽の園」
左下の「透明なボールのなかにいるカップル」がそのまま引用され、「鳥の女王」の足下にいます。
Dangerousのアートワークでは、臍の緒につながっている胎のうのように見えます。
(※マーク・ライデン氏の作品には頻繁に「胎児らしきもの」が登場する。)
また、中央下のマイケルの手の上にいる少女が持っている「謎の頭蓋骨」も、この絵画の右側に描かれた頭蓋骨をモデルにしている可能性があります。
カリアティード(女像柱)
女性の彫像が柱の代わりに使われる「カリアティード」は、古代ギリシャから用いられる建築様式です。
ギリシャの「エレクティオン神殿」にあるものが一番有名です。
Dangerousのアートワークで描かれたカリアティードのモデルは、フランスのブルゴーニュ地方の「聖トーマス教会」にあるアンリ2世(コンデ公)の墓と言われています。
参考 tombeau d’Henri II de Bourbon, prince de Condé
たしかにポーズが似ていますが、この場所はマニアックすぎてあまり情報がありませんでした😅
ヨーロッパ王朝の権威を象徴する人物
左右に鎮座する「王と女王」はヨーロッパ王朝史上の重要な人物を描くと同時に、「マイケルの戴冠式」を表現しているかもしれません。
右側の「イヌの王」はナポレオン1世を、左側の「トリの女王」はエリザベス1世とエリザベス2世をモデルにしていると考えられます。
ナポレオン1世とエリザベス1世は、歴史上とても大きな功績を残した人物。
ヨーロッパにおける「偉大な指導者」の象徴です。
エリザベス2世はマイケルと同じ時代を生きたイギリスの女王。マイケルがとても尊敬し憧れる人物です。
個人的な意見ですが、これはマイケルが音楽業界の王座につく、「マイケル自身の戴冠式」を表現しているのかもしれません。
マイケルが「キング・オブ・ポップ」と呼ばれるきっかけとなった出来事は、Dangerousの発表前、1989年のソウル・トレイン・ヘリテージ授賞式です。
プレゼンテーターのエリザベス・テイラーが “true king of pop, rock and soul”(ポップとロックとソウルの真の王様)と紹介してマイケルを呼び寄せました。
その後、マイケルサイドもこの呼び方を多用し、「マイケルジャクソンはキング・オブ・ポップ」という認識が広まります。
マイケルが直接王冠をかぶると強い批判を浴びそうだから、バレないように鳥さんと犬さんにしたのかも?
エリザベス2世とエリザベス1世
右側の「トリの女王」は1953年のエリザベス2世戴冠式の公式写真と多くの共通点があります。
Embed from Getty Images- 紫の王冠
- マントの柄(白地に黒の斑点)
- 王笏(杖)と宝珠(ボール)
こういったアイテムが絵と似ています。
エリザベス2世は、25歳の若さでイギリス女王に即位してから2022年に96歳で亡くなるまで、イギリス史上最長の70年間、女王の座に君臨していました。
マイケルはジャクソンズ時代にエリザベス女王に謁見しており、「実際に見た女王の目は素晴らしかった」と語りました。
ゴージャスな2重のエリは、エリザベス1世の肖像画をモデルにしていると考えられます。
Embed from Getty Imagesエリザベス1世は、イギリスのために生涯を捧げた人物として有名です。
優秀な臣下の登用と巧みな交渉術で、危機に陥っていたイギリスを大国に押し上げた人物として現在も尊敬されています。
ナポレオン1世
左側の「イヌの王」のモデルはドミニク・アングル作「玉座のナポレオン」と考えられます。
皇帝として威風堂々とふるまうナポレオンの姿が描かれています。
オリジナルではレースと刺繍で装飾された手袋を身につけていますが、
Dangerousのアートワークではラインストーンのついた白い手袋をつけています。
マイケルのトレードマーク「右手のキラキラ手袋」を意識しているのでしょう。
近代エンタメへのオマージュ
マイケルは、彼の親世代の映画やパフォーマーから大きな影響を受けていました。
Dangerousのアートワークにも、20世紀前半の映画や文学からインスパイアされた描写がいくつかみられます。
モダン・タイムス
トリの女王の足元にある歯車は、チャールズ・チャップリンの映画「モダン・タイムス」のワンシーンをイメージしていると言われています。
単に歯車が描かれているだけなので、「絶対にモダン・タイムスだ」とは言い切れません。
- マイケルはチャップリンをとても尊敬している
- マイケルはモダンタイムスの主題歌「Smile」が大好きで、次作のHIStoryでカバー曲を収録した
- 映画「モダン・タイムス」では現代の社会構造や労働形態に疑問を投げかける内容
これらの理由から、マイケルやライデン氏が映画「モダン・タイムス」の要素をアートワークに入れ込んでいても不思議ではありません。
Dangerousのアートワークに、次作HIStoryの片鱗があるなんて胸熱
また、この映画で描かれる「機械文明」のきっかけとなった「産業革命」は、18世紀後半にイギリスを中心に起こりました。
そのため、イギリスの女王の足元に、産業革命の象徴の歯車がひそんでいる構図と考えることもできます。
オズの魔法使い
イヌの王の左上にいる「翼の生えたサル」は、文学「オズの魔法使い」に登場するキャラクターと考えられます。
「オズの魔法使い」は何度も映画化されたり、劇場で公演されたれたりして、世界中でとても人気が高い作品。
マイケルも本作のリメイク映画「The Wiz」にカカシ役として出演しており、縁が深いです。
この出演をきっかけに、プロデューサーのクインシー・ジョーンズと意気投合し、Off The Wall, Thriller, Badの名作が生まれました。
マイケルの重要なキャリアに貢献した作品とも言えます。
ひときわ目立つ人物たち
Dangerousのアートワークは動物たちの存在感が目立つと同時に、印象的な人物が何人か登場します。
- マイケルジャクソン本人
- 頭蓋骨を持った少女
- P.T.バーナム
- ミシュ・メシャロス
- マコーレカルキン
彼らについて簡単に説明します。
4人のマイケル
このアートワークでは、4人のマイケルが登場します。
上中央の目は、アルバム「Bad」のアートワークを参考に描かれたと言われています。
左下の手は、指にテーピングがされているので「マイケルの手」と分かります。この指テープスタイルは「Smooth Criminal」から始まりました。
壁面にひっそりと彫刻されたマイケルは、グラミー賞授賞式とホワイトハウスでレーガン大統領から表彰された時の衣装にデザインが似ています。
Embed from Getty Images人種の壁をやぶり、一人のソロアーティストとして世界に正当に認められた重要な瞬間です。
右下のマイケルはジャクソン5時代、可愛い少年だったころの姿を思い出させます。
彼の長年に渡る輝かしい活躍が、アートワーク全体に散りばめられているようです。
頭蓋骨を抱えた謎の少女
マイケルの手に乗っている「頭蓋骨を抱えた謎の少女」は、ライデン氏が制作した一番最初のデッサンに登場していました。
- この少女は誰なのか
- どんな状況なのか
- 持っている頭蓋骨は何の生物なのか
- どんなメッセージが隠されているのか
様々な憶測がされており、はっきりとしたことは分かりません。
- 最初のデッサンで、ど真ん中に大きく描かれている
- マイケルの手の上に乗っている
上記のことから何か大きな意味がありそうで、強い存在感を放っています。
P.T. バーナム
右下にいるタキシードを着たおじさんは「P.T.バーナム」がモデルと言われています。
P.T.バーナムは18世紀に活躍した興行師で、サーカスや歌手の公演を世界中で成功させ、ショービジネスに新たな歴史をつくりました。
バーナム氏の生涯をテーマにしたミュージカル映画「グレイテスト・ショーマン」(2017年公開)は世界中で大ヒット。
主題歌の「This Is Me」もすごく流行っていましたね。
マイケルはバーナム氏の伝記を熱心に読み、彼のように「世界中で最大のショー」を作りたいと考えていました。
マイケルは、かつて世界を驚かせたP.T.バーナムの偉大なショーに追いつき、追い越す意気込みでDangerousを制作したのでしょうか?
ミシュ・メシャロス
PTバーナムの頭にのっている、ハットを被った小さいおじさんのモデルはミシュ・メシャロスと考えられます。
ミシュ・メシャロスは小人症のため身長わずか83cmのユニークなルックスをいかして、俳優・パフォーマーとして活躍。
マイケルと同じ時代を生き、2016年に亡くなりました。
メシャロスはDangerousのPRも兼ねたペプシのCMでマイケルと共演。アートワークとそっくりな衣装を着て「小さいおじさん役」を演じました。
また、P.T.バーナムが設立したサーカスグループの一員でもありました。
ミシュ・メシャロスはマイケルと個人的に親交があり、何度か一緒に写っています。
マイケルはアマチュア時代、シカゴのコンテストに出演したときにライバルから「あの小人がいるグループに負けるな!」と陰口を言われたことがあります。
マイケルがあまりにも上手なので子供とは思えず、小人症の大人と勘違いされたのです。
そんな経験から、マイケルも小人症の人に何かシンパシーを感じたのかもしれません。
マコーレ・カルキン
Embed from Getty Images右下の小舟に乗っている「M」マークのTシャツを着た少年は、俳優のマコーレ・カルキンと言われています。
マコーレは映画「ホーム・アローン」主演の超人気子役で、マイケルの曲Black Or Whiteのビデオにも出演。
マイケルとマコーレはプライベートでも強い友情で結ばれていました。
幼い頃から人々の注目を浴び、忙しくしていたマコーレはマイケルと共通する悩みを抱えており、そんな彼をマイケルは元気づけていたのでしょう。
デンジャラス収録曲とリンクする部位
ライデン氏は、アートワークを制作する前にDangerousの収録曲をいくつか聞いたとインタビューで語っています。
「どの曲を聞いたのか?」「どれくらいの完成度だったのか?」
詳しいことは分かりません。
Dangerousのアートワークに影響を与えたと考えられる収録曲を3つご紹介します。
Black Or White
左側のトリの女王の足元に、半分黒人、半分白人の像があります。
これは「白人でも黒人でも関係ないだろ!」というメッセージソング「Black Or White」を連想させます。
半分黒人、半分白人の姿は、あらゆる人種・年代の人々から貪欲に学び、取り込んでいくマイケル自身を投影しているのかもしれません。
Heal The World
中央下の奥に、上下逆さまの地球が描かれています。
その手前に、世界地図が描かれたマイケルの手があり、上には謎の頭蓋骨を抱えた少女が乗っています。
- 危機がせまっている地球
- 世界を良くしたいというマイケルの願い
- 子供たちの未来を守ってあげたいという思い
Dangerousの収録曲「Heal The World」のメッセージからインスパイアされた描写と考えられます。
また、頭蓋骨を抱える少女は「過去を表す化石」と「未来を表す子ども」の対比かもしれません。
そう考えると、「Heal The World」の最後で、マイケルの声が少女の声に入れ替わり、命のバトンを渡しているイメージに重なります。
Dangerous
Dangerousのタイトル曲は、工場のような無機質な物音がイントロで流れます。
このイントロと、アートワークに描かれた工場のイメージにつながりを感じます。
謎の数字
ライデン氏の作品には謎の数字が書き込まれることが多く、このアートワークでもいくつか印象的な数字が見られます。
どんな意味が隠されているのか?謎に包まれたままですが、ざっくりまとめてみます。
ゾウの額「9」
中央右寄りの象の額に「9」が刻印されています。
なぜでしょう…強いていうならマイケルが9人兄弟ということが関係しているかもしれません。
小さいおじさんの帽子「7」
小人がかぶっている水色のハットには「7」と書いてあります。
「7」はマイケルがお気に入りだった数字で、彼のステージ衣装などにも用いられています。
参考記事 Michael Jackson and the Number 7 – MJJ World
マイケルのスタイリスト、マイケル・ブッシュ氏は、
- マイケルが7番目の子ども
- マイケルの生まれた年(1958)の19と58を足すと77になる
ことが「7」好きの理由と語っています。
参考記事 「777」、「CTE」、「1998」の意味が明らかに – MJJ Fanclub Japan
白髪のおじさんのバッヂ「1998」
タキシード姿のおじさんの襟元には「1998」のバッジがついています。
これはマイケルが自分のサインの右下によく付け足していた謎の数字です。
1998の下に謎の3つの点(もしくは丸)とAmazonのロゴみたいな矢印がついているところも、バッジのデザインで再現されています。
1998年に何かが起こるのか…などと想像してしまいますが、結局この数字の意味は1998年以降もわかりませんでした。
マイケルはみんなの気をひくために思わせぶりな数字を書いていたようです。
まとめ
魅力的で謎めいているアルバム「Dangerous」のアートワークについて、全体像から詳細な描写まで解説してきました。
ざっくりまとめると以下の通りです。
この記事では、「確実〜ほぼ確実な情報」と、「予測にとどまる不確実な情報」が混在しています。
それぞれ分けてまとめると以下の通りになります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
Dangerousのアートワークについて掘り下げた記事、楽しんでいただけたでしょうか?
実は、ここに書いてある内容が全てではありません。
もっと多くの情報が知りたい方は、以下の参考資料をご覧ください。
参考資料
個人のウェブサイト「Art Of Design」
ファンであり、アーティストのMohammad Osmanさんが作成された個人サイトの記事。
世の中に存在するDangerousアートワーク関連の情報のなかで最も完成度が高いと考えられます。
なぜなら、他の資料のほとんどがこのページと内容が被っているか、このページから引用しているからです。
この記事には、ライデン氏のインタビューが掲載されています。私が作者さんに直接メールで問い合わせたところ、インタビューのソースはスペイン語のマイケルファンサイト(La Corte Del Rey Del Pop)だが、該当部分はもう消えている。そしてインタビューの日時や場所などの詳細は分からないということでした。
マイケル・ジャクソン コンプリート・ワークス
マイケル・ジャクソン コンプリート・ワークス(Joseph Vogel著)
当ブログで何度も紹介している、マイケルの楽曲について詳細な情報が書かれた神作品。
「Dangerousチャプター」の冒頭で、アートワークに関する詳しい解説と考察が読めます。
日本語版は絶版で中古品のみ。
英語の原著(Man In The Music)は、現在も本、電子書籍、Audible版など幅広く入手できます。
Youtubeチャンネル”The Detail”の特集
マイケル・ジャクソンの気になるアレコレを詳しく特集しちゃう非公式Youtubeチャンネル「The Detail.」の特集動画。
すぐ見れるし、画像や映像が豊富なので一番分かりやすいかもしれません。
コメント
こんにちは〜
今回も興味深い記事、ありがとうございます😊
昔のレアものに、このジャケットが飛び出す絵本みたいになってるのがありますよね、あれで、小さな子どもといろいろお話ししながら遊べたらたのしいだろうなぁと思いました♪
「逆さまの地球」という表現は少し気になりました。南半球で立っていることを想像するとその向きが自然なので。そのように見ると北半球の人びとがよく見る向きの地球儀とは逆さまであることに作者やマイケルの何か強い主張があるのではと感じました。
青子さんありがとうございます。
このアートワーク、ときどき服のデザインに使われてるけど、ぜひ絵本を再販して欲しい😍
たしかに!
「北が上」というのは私たちの勝手な決め事ですね。
宇宙レベルで考えたら上も下もないですから。
そういう西洋社会の思い込みを風刺してるのかも。
その意見初めて読みました。
青子さんすごい‼️
追記したいです✨🤩