マイケルジャクソンのアルバム「ヒストリー(HIStory)」は唯一無二の傑作

こんにちは。あおありです。
この記事では、1995年6月に発表されたマイケルジャクソンのアルバム「HIStory(ヒストリー)」の魅力をお伝えします。

HIStoryの視聴方法

HIStoryは「ベストアルバム」と「新曲が収録されたアルバム」の2枚組です。
今回は、新曲が収録されている2枚目のアルバムについて記載します。

HIStoryは、1993年に少年を性的虐待しているという疑惑がかけられ、マイケルが人生最大のピンチを経験したあとに発表されました。
参考記事 マイケルジャクソンの少年性的虐待疑惑は本当? 簡単に分かりやすく解説!

マイケルらしい鬼キャチーなメロディーとキレッキレのビートに合わせて、山積みになった「怒り、苦しみ、孤独」の感情をぶちまける激しい作品です。
混沌とした中にもマイケルの繊細さが表れていて、うっとりするような美しさを感じる瞬間が何度もあります。

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私がHIStoryを初めて聞いた時は、雪崩のように押し寄せてくる強い感情と言葉に圧倒されるばかり。
マイケルのメッセージを理解し、受け止めることは難しかったです。
それでも、

この人は何かを必死で訴えている!
よく分からないけど、凄みを感じる。
かっこいい…!

と、心に迫り来るものがありました。

HIStoryを何度も聞き、曲の意味を調べると、ますますマイケルのエネルギーが伝わってきます。
同時に「私の生き方、これでいいのか?」と考えさせられ、
「マイケルって、作品がすごいだけじゃなくて人間としてめっちゃかっこいい…‼️」と惚れ込み、
気づけば大ファンになっていました。

HIStoryは、他のアーティスト作品とも、マイケルの他の作品とも毛色の違う唯一無二のアルバムです。
「明るく楽しいポップミュージック」の枠から少々外れていますが、あなたの心に刺さり、人生に強烈なインパクトをくれるでしょう。

HIStory基本情報
  • 1995年6月に発売
  • 「ベストアルバム(過去のアルバム Off The Wall, Thriller, Bad, Dangerous から15曲を厳選)」「未発表の15曲を収録したアルバム」のCD2枚組。
  • マイケルの人生に大打撃を与えた1993年の性的虐待疑惑が解決した後の作品。
  • 新曲は全体的に「怒り、苦しみ、孤独、悲しみ」といった負の感情を表現するものが多く、世の中に対する猛烈な抗議も含まれている。
  • 「2枚組なので価格が高い」「王道の楽しいポップアルバムではない」というハンデがありながら、世界全体で2000万組以上売り上げた。2枚組CDとしては世界でトップクラスのセールス。(参照: Duouble album wikipedia
HIStoryの冒頭3文字が大文字な理由

History(歴史)His story(彼の言い分)のダブルミーニングを持つタイトルなので、「History」でなく「HIStory」と表記されることが多い。

この記事では、HIStory収録曲の魅力をガッツリと掘り下げます。
聞いたことがある方も、まだの方も、この記事を読んでマイケル作品をさらに楽しんでいただけるとうれしいです♫

ヒストリー収録曲の紹介

まずはHIStoryのおすすめ3曲全曲の簡単な紹介から始めましょう。

おすすめ3曲(TDCAU, Earth Song, YANA)

いきなり全曲聞くのは大変。おすすめを教えて。

マイケルの発表した曲は全て膨大な手間がかけられている上、何十曲〜何百曲から選抜されて収録されているため、クオリティーが非常に高いです。

その中からおすすめ曲を選ぶのは難しいですが、個人的に選ぶなら以下の3曲。

  • They Don’t Care About Us
  • Earth Song
  • You Are Not Alone

この3曲はシンプルで印象的なメロディーが頭に残り、マイケルの美しさを存分に味わえるので超おすすめです。

They Don’t Care About Usは、思わず一緒に体が動いてしまう、軽快で心地よいリズムの曲。
歌詞が分からないと明るい歌に聞こえますが、実際は「ないがしろにされている人、不当な暴力を受けている人」の立場から、社会や権力者層に対して強く抗議するシリアスな歌です。
参考 They Don’t Care About Usの意味と背景|ブラック・ライブズ・マターで再評価

ブラジルで撮影されたミュージックビデオは、Youtubeで10億回再生を突破。
マイケルのビデオの中ではビリージーンに次ぐ再生回数で、とても人気が高いです。

Earth Songは、地球の危機に警鐘をならす歌です。
美しい森の中をイメージするイントロから、この世の終わりのような荒々しいラストまで、圧巻のスケール。
壊れていく地球の叫び、大地の怒り、失われていく生命の悲しみを伝えるマイケルの歌声に言葉を失います。
この歌は世界中で高評価を受け、15カ国以上の国でチャート1位を獲得。
マイケルはツアーだけでなくテレビ番組などでも繰り返しパフォーマンスし、「もっと地球の問題に関心を持とう」と呼びかけました。

You Are Not Aloneは、マイケルのバラード曲のなかでも代表作です。
優しく、かつ芯がある美しい歌声は、太陽の光をきらきら反射しながらゆらめく水面のよう。
聞いた人、全員溶けます。
ミュージックビデオでは、新妻リサ・マリー(エルヴィス・プレスリーの娘)と、ほぼ全裸のショットにドキドキ…

全15曲をさらっと紹介

Scream

マイケルの妹、ジャネット・ジャクソンとのデュエット曲。
アップテンポのかっこいいサウンドを背景に「不公平にはもうたくさんだ!」と、2人して不満をぶちまけます。
ミュージックビデオでは宇宙船の中でマイケルとジャネットが大暴れ。
ファンが待ち望んだ2人のダンス共演も!!
日本のアニメ(AKIRA,赤い光弾ジオン,バビル2世)、坐禅、日本庭園など、随所に「日本」テイストが散りばめられており、要チェックです。

They Don’t Care About Us

未来的、機械的な印象のScreamから一転、ラフで生々しいサウンド。
軽快なリズムに乗せて、警察・政治の腐敗と矛盾に対する怒りを訴える。
サビ前の高音が耳に心地よい。力強さが増していくコーラスも美しい。
参考 They Don’t Care About Usの意味と背景|ブラック・ライブズ・マターで再評価

Stranger In Moscow

「外には大勢のファンがいるのに、僕はすごく孤独で寂しい…
性的虐待疑惑の渦中で苦しむ中、マイケルがワールドツアーでモスクワを訪れたときに感じた寂しさ、抑うつを映し出した曲。
どんよりとした空、雨、冷たい空気、感傷的な気持ちを連想させる、情緒的で美しいメロディー。
「スターリン」「KGB」など、ロシアや旧ソ連の政治的な緊張を示唆する歌詞も。

This Time Around

スムーズで都会的なサウンド。
歌詞は「今回は(This time around) 僕は負けないぞ」という強気な感じ。
「お〜お〜お〜お!」のコーラスが癖になる。
“ァラガラガラガラガラガラガラガ”の囁き声や、トランシーバー越しのようなエフェクトなど、遊び心のある要素たっぷり。

Earth Song

美しい森の中をイメージするイントロから、悲しげな歌い出しへ。
環境破壊、戦争、動物の乱獲など、人の手によって荒らされていく地球の怒り、悲しみ、痛みを表現している。
ラストは、喉をつぶす覚悟で叫ぶ声の迫力が凄い。

D.S.

キャッチーでロックな曲。
間奏はガンズ&ローゼス(アメリカの人気ロックバンド)のメンバー、スラッシュがギター演奏を提供。
93年のマイケル性的虐待疑惑の捜査を主導したサンタバーバラ市の検事「トム・スネドン」をガンガンにディスる歌。
公式の歌詞には「ドム・シェルダンは冷徹な男だ」と架空の人名が書いてあるけど、実際の歌唱はトム・スネドンって言っちゃってる…
ツアーで歌う時は、頭の中で5回ぐらい彼を惨殺してそう😅

Money

お金の魅力に取りつかれ、他人を陥れてでも大金を得ようとする人々を風刺する。
マイケルの声は魅惑的で妖しげで、悪魔のささやきのよう。 
ラストは幾重にもまとわりつくようなコーラスにゾクゾクっとする。

Come Together

1969年に発表されたビートルズによる同名曲のカバー。
マイケルの歌い方は重たく、ねちっこく、色っぽく、かなり癖つよめ。
この曲は1988年に公開された映画「ムーンウォーカー」のラストシーンですでに使用されていた。
ミュージックビデオは、ステージで挑発的に歌うマイケルがとにかくエロかっこいいので必見。
ジョン・レノンの息子、ショーンも観客として出演。

You Are Not Alone

とにかく歌声が天使
1フレーズごとにうっとりする。染みるわぁ〜。
寂しげなイントロから徐々に盛り上がり、最後は暖かく包み込まれるような気持ちに。
愛する人がいなくなってしまった寂しさと、離れても消えない絆の温かさが共存する不思議なバラード。

Childhood

ディズニーっぽい、ロマンチックで幻想的な曲調。
失われた子供時代の埋められない寂しさ、人々に理解されない悲しさを吐露している。
マイケルは「今まで書いた中で最も正直な曲。僕について本当に知りたいなら、聞くべきだ。」とコメント。

Tabloid Junkie

売り上げを伸ばすためなら、虚偽の中傷も平気で行うメディアと、その内容を疑わず消費する大衆への批判。
細かいビートボックス、鬱々とした歌い出し、たまった怒りを吐き出すようなブリッジ、そして美しいコーラス。
様々な表情の歌声を楽しめる展開がGood👍

2Bad

「僕を打ち負かしたと思ってた? 全然できてないね。あーお気の毒に!(Too bad)」という、煽り度マックスの歌。 
イケイケなビート、強気な歌い方、過去のヒット曲”Bad”を連想させるフレーズなど遊び心のある歌詞が面白い。
サビとヴァースの掛け合いになっているラストの構成がかっこいい。

History

  1. 壮大なオーケストラ演奏が度肝を抜くイントロ
  2. 苦しみながらも、険しい道を一歩一歩進んでいく歌い出し
  3. 感傷的で、安らぎを感じるブリッジ
  4. 「毎日が君の歴史を作っていくんだよ」という力強いサビ

というドラマチックな構成の曲。
苦しい登山を耐え抜いて、最後には頂上からこれまでの歩みを振り返っているような気持ちになる。

「困難を乗り越えていこう。克服していこう」というメッセージ。
そしてクラシック、ナレーション、スピーチなど様々な要素を詰め込んだ実験的な音作り。
アルバム「HIStory」のコンセプトを凝縮したような作品。

Little Susie

“History”に引き続きクラシック音楽モーリス・デュリュフレ作曲の「レクイエム」作品9)をサンプリング。
ある少女、Susieの孤独で悲惨な死についての歌。
明るい希望を感じる前曲から一転、この曲では救いのない悲しみに包まれる。
ノスタルジックで童謡のようなメロディー、繊細で美しい反面、不気味でもある。
マイケル作品の中でも異彩を放つ曲。

Smile

1936年に公開された映画「モダン・タイムズ」使用曲のカバー。
マイケルが尊敬するエンターテイナー、チャーリー・チャップリンが作曲した。
New York Philharmonic Orchestraによる優美なオーケストラ演奏に乗せて、
「辛くても、ほほえもう。人生はそれでも価値がある」と伸びやかに歌い上げる。
どんなに辛いことがあっても、怒りに我を忘れそうになっても、最後にはポジティブであろうとするマイケルのポリシーが表れている。

ヒストリーの魅力3つ

ここまで、HIStoryの全収録曲を振り返ってきました。

「華やかな衣装で、ノリノリで歌い踊り、”ポウッッ!”と決めポーズする」

一般的なマイケルのイメージと随分違いますね。

HIStoryを聞いていると、私は「マイケルが目の前で暴れ回っているような迫力」と同時に、「吸い込まれるような美しさ」を感じます。

そんなHIStoryの魅力を3つに分けてみました。

  • 負の感情がむき出し
  • バチクソ怒りながらも内面の美しさがにじみ出る
  • 最悪の状況で自分を客観視できる精神力

負の感情がむき出し

HIStoryでは、「怒り,苦しみ,痛み,悔しさ,屈辱,悲しみ」といったネガティブな感情が、包み隠さず表現されています。

前作の「Dangerous」が発表されてから4年、長い沈黙を破ったマイケルがどんな歌を出すのか?
世間の注目が集まる中、マイケルはいきなり不平不満をぶちまけ、自らにかけられた疑惑が全くのデタラメであると主張します。

I’m tired of injustice, I’m tired of the schemes
Your lies are disgustin’
So what does it mean, damn it

不正にはうんざりだ 陰謀にはうんざりだ
お前の嘘はマジで最低
一体何なんだ?この野郎!

Screamの歌詞(冒頭)

HIStoryの1曲目 “Scream” をプロデュースしたジミー・ジャムは、マイケルと初めて仕事をしたときの衝撃をインタビューで語っています。

He walked into the studio, very nice and very kind: ‘OK, I’m going to try my part now. . . .’ So Michael goes in and the moment the music starts, he turns into the Tasmanian Devil. He’s a whole different person-

彼はスタジオの中に歩いて行った。とても良い感じで親切だった。
「オーケー、僕のパートを歌ってみるよ…」
そしてマイケルが入って、音楽が始まった瞬間、彼はタスマニアデビルに変身した。全に別の人間だー

JIMMY JAM REMINISCING ON MICHAEL JACKSON RECORDING “SCREAM” (マイケル公式サイト)
タスマニアデビル: オーストラリアに生息する有袋類
かわいいが興奮すると凶暴に。顎の力は強く、骨を噛み砕ける。

マイケルは厳しい状況下でリスクを恐れず、ありのままを思い切り表現しました。
あまりにいさぎよく振り切っているので、ネガティブなのに何だか気持ちよく、爽快に感じます。

マイケルは当時、「どんなコンセプトのアルバムを作っても批判される」という厳しい状況にありました。
自身の性的虐待疑惑について言及せず、明るくて楽しいポップアルバムを作れば「現実逃避している」と受け取られてしまう。
一方で、自分の意見を表明すると「自己満足の作品だ」と非難される。
それを見据えた上で、迷わず自分の意見、感情を作品に注ぎ込むという選択をしたのです。

バチクソ怒りながらも内面の美しさがにじみ出る

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HIStoryを聞いていると、大嵐みたいな世界の中で、ふと美しさに我を忘れてしまう瞬間が何度もあります。
この「荒々しさと美しさのコントラスト」がたまらなく魅力的。

この人、めっちゃ怒っているのにどうしてこんなに綺麗なんだろう…?

初めて聞いた時はすごく不思議でした。

HIStoryの美しさを感じる瞬間
  • Scream サビ入る前の”Uh—Ah—“バックコーラス
  • Stranger In Moscowの間奏
  • Earth Songの言葉にならない訴え”Ah Ah Ah…”
  • Moneyの悪魔のささやきのようなサビ
  • Tabloid Junkieの最後のバックコーラス”Ah–Ah—“

たくさんあるうちの、ほんの一部を挙げました。

個人的には“Uh…”とか”Ah…”などのバックコーラスに何度も心を奪われます。

この幻想的で、繊細で、透明で、心がギュッとつかまれるような美しさはマイケルにしか出せません。

  • 天性のセンス
  • 絶え間ない努力で磨いたスキルと感性
  • 壮絶な人生経験
  • 正面から物事に向き合う、誠実な人間性

年々深みを増していくマイケルの歌声には、これらの要素が全て凝縮されています。

最悪の状況で自分を客観視できる精神力

HIStoryには、マイケルの個人的な感情を表現するだけでなく、世界中の視聴者が抱えている気持ちと共鳴する力があります。

これは、マイケルが心身共にボロボロな状況でも、自分の心を一歩離れた視点で観察できる精神力を持ち合わせていたからでしょう。

Stranger In Moscowの作曲エピソードには、マイケルの強いメンタルが現れています。

1993年9月、マイケルはデンジャラス・ワールドツアーの公演で、ロシアの首都モスクワを訪れました。

モスクワにて、兵隊らしき男性たちと一緒に行進するマイケル

当時のマイケルは直前に起きた児童性的虐待疑惑の渦中にあり、怒り、悲しみ、不安、体調不良脱水症,頭痛,鎮痛剤依存など)に苦しんでいました。
参考記事 マイケルジャクソンの少年性的虐待疑惑は本当? 簡単に分かりやすく解説!

熱心なロシアのファンたちに歓迎され、コンサートは大成功をおさめたものの、マイケルの心はどんよりした雲におおわれているようでした。

モスクワのホテルの中で感じた抑うつを、マイケルはStranger In Moscowという曲に投影します。

Outside my hotel was just a sea of faces of fans, chanting and screaming, but I was inside my room and I felt like a stranger in Moscow, so all alone, like I was the last person on the planet, and in the song I say, “How does it feel when you’re all alone, you’re cold inside?” I say, “It’s like a stranger in Moscow.” 

ホテルの外は、唱えたり叫んだりするファンの顔が一面に広がっていた。
でも僕は自分の部屋の中で、モスクワにいる「よそ者」のように感じていた。まるでこの惑星に残された最後の1人みたいに、すごく孤独だった。

それで、歌の中で僕はこう言う「たった1人で、心の中が寒いとき、君はどんな気持ちか?」そして答える。「モスクワのよそ者みたいな気持ちだ」

マイケルジャクソン(MTV特番“Michael Jackson Changes HIStory”より)

孤独で冷たい気持ちに苦しみながら、「自分はいま、どんな気持ちだろう?(How does it feel?)」と自問自答しています。

このように、人生のどん底にある状況で自分の心を少し離れた視点で観察するには、強い精神力が必要です。

タフなメンタルを持っていなければ、マイケルのように自分の心を作品に映し出し、視聴者の共感を得られるレベルに昇華できません。

ヒストリーで感じるマイケルの生き様

マイケルが発表してきた作品のなかでも、とりわけ個人的な感情・メッセージを色濃く反映されたHIStoryには、マイケルの突き抜けた生き様が現れています。

  • 全身全霊で表現する
  • 音楽を通して敵と戦う
  • 音楽を通して傷を癒す

音楽に自分の全てを注ぎ込む姿がかっこよすぎて、しびれます。

全身全霊で表現する

マイケルはとても遠い存在のはずなのに、私たちと強いつながりを感じさせてくれます。

それはマイケル自身が誰よりも心を開き、自分をさらけ出し、世界中の人々に歩み寄っているからでしょう。

密かに、一人で、心の奥底からこう考えるんだ。
僕には使命がある。
その道に従い進んでいくという、僕だけの使命が。
僕がここにいるのには理由があると心から信じ、感じている。
それは僕の仕事。人々のためにパフォーマンスすること。
それを観客が受け取ってくれれば、僕は報われる。

1980年 マイケルの言葉

マイケルは確固たる決意のもとに、ステージ上では常に全力。出し惜しみせず、全てを注ぎ込みます。

私たちとは言葉、文化、場所、時代、生活スタイルなど何もかも違うはずなのに、不思議と近く感じる。お互い分かり合っていると思える。

僕が歌うものは全部、本気なんだ。もし本気じゃなかったら、歌わない。

マイケル・ジャクソン(1970年,12歳ごろのインタビューより)

マイケルは3歳でパフォーマンスを始めてから、常に全身全霊で歌い続けてきました。

音楽を通して敵と戦う

私たちは話したり、文章を書いたり、作品を作ったり、さまざまな方法で自分を表現できます。

マイケルにとって一番の表現方法は音楽。

インタビューや本の中でも自分の考えを語っていますが、豊かなサウンド七色の歌声、そして情熱的なダンスが、彼の思いを一番雄弁に語ってくれます。

僕は音楽を通して、全ての壁を破ってきた。
政治的な意見を言う必要はない。僕はそれを全部、音楽を通じて行う。
あらゆる言語の壁を超えて、全ての人種に向けて。音楽は世界中に広がるんだ。

マイケル・ジャクソン

普段は穏やかな口調のマイケル。
しかし音楽がかかると豹変し、溜まりに溜まった怒りと抗議の声をあげます。

これまで静かに耐えてきたマイケルが、水を得た魚のように生き生きと自分を解放する。それがHIStoryという作品です。

音楽を通して傷を癒す

僕にとって、ステージの上が一番居心地がいい

マイケル・ジャクソン

マイケルは、ネガティブな感情を音楽を通じて表現することで、辛い出来事を乗り越えました。

HIStoryを聞いていると、最初の曲「Scream(良い加減にしろ!と叫ぶ)」から最後の曲「Smile(辛くても笑おう)」まで、マイケルの心が浄化されていく過程を見ているようです。

Stranger In Moscowをマイケルと共同制作したブラッド・バクサーは、モスクワのホテルでこの曲を作ったときの様子をインタビューで語っています。

  • 朝の10時半、バクサーはマイケルに呼び出された。
    モスクワのホテルにいたマイケルは、depressive(憂うつ)な様子だった。
  • 昼の12時には曲ができあがった。そしてマイケルはハッピーな様子になった。
    参照 In The Studio With MJのインスタグラム投稿)

Stranger In Moscowでは「どうしようもない孤独と寂しさ」が表現されています。
それと同時に、この曲を制作する過程でマイケルは癒しを得られたことが分かります。

マイケルにとって一番の治療は、音楽を通じて表現することでした。

ヒストリーで表現される社会問題

HIStoryには、多様な社会的メッセージが散りばめられています。

発表から28年以上経っているにも関わらず、取り上げられている議題は全て現代に通じるものばかり。
自分の生き方や現在の社会について、考えさせられるきっかけを与えてくれます。
作品中で取り上げられている社会問題をまとめました。

権力の腐敗

HIStoryには、公的機関の腐敗を目の当たりにしたマイケルが、政府を真っ向から批判する歌が収録されています。

1993年8月に勃発した児童性的虐待疑惑で、マイケルは最終的に和解金を支払いました。
無実を証明できなかった原因のひとつに、公正さに欠いた地方の公的機関(裁判所、検察、警察)があります。

  • 刑事裁判が始まる前に民事裁判が始まろうとしていた。(被告側に非常に不利になるため、通常は行われない)
  • 裁判所は「刑事裁判を先に行うべき」というマイケル側の要求を繰り返し却下した。
  • 検察・警察側は、マイケルが虐待をしたという物的証拠がないにも関わらず、「家具を破壊しながら家宅捜査」「マイケルを裸にした写真撮影」など人格を踏みにじる捜査を強行。
  • マイケル側はエヴァン・チャンドラーに恐喝された件で訴えを起こしたが、この捜査は早々に切り上げられた。

マイケル側に不利な采配を続ける裁判所と、なんとしてでもマイケル有罪の証拠を見つけようとする検察の公平性に欠けた姿勢を見て、マイケル側は和解を検討するしかありませんでした。
※詳しい説明は以下を参考にしてください。
参考 マイケルが和解した理由

1人の国民、市民でしかないマイケル。
公的機関が人権を守ってくれない状態で、自由になることはできない。

I’m tired of injustice, I’m tired of the schemes

不正にはうんざりだ 陰謀にはうんざりだ

Screamの歌詞

本来は人々の幸せを守るために、強い権力を与えられているはずの警察、裁判所、政府。
彼らが公正さに欠け、罪のない人を暴行するような酷いことがあっていいのか?

They Don’t Care About Usでは、自らが経験した不公平、怒り、不安、屈辱を、世界全体の問題として訴えています。

Tell me, what has become of my rights?
Am I invisible ‘cause you ignore me?
Your proclamation promised me free liberty, now
I’m tired of being the victim of shame
They’re throwing me in a class with a bad name
I can’t believe this is the land from which I came

僕の権利はどうなってるんだ
君に無視されている僕は、いないも同然ってことか?
僕の自由と解放を約束すると宣言したじゃないか

They Don’t Care About Usの歌詞

「ドム・シェルダンは冷徹な男だ」と繰り返し叫ぶ歌「D.S.」は、マイケルに対する厳しい調査を強行した検察官「トム・スネドン」を批判する歌と言われています。
(言われている…というか、実際の音源で「トム・スネドン」って言っちゃってます。)

You think he brother with the KKK?
I bet his mother never taught him right anyway
He want your vote just to remain TA
He don’t do half what he say
Dom Sheldon is a cold man

ヤツがKKKと仲良しだって思うかい
母親に善悪の分別を全く教えてもらえなかったんだろうな
ヤツはTAに居座り続けるために君の票を欲しているぜ
言ってることの半分もできないくせにな
ドム・シェルダンは冷徹な男だ

D.S.の歌詞

* KKKとは
KKK(Ku Klux Klan)の略称。北方系の白人が他の人種より優れているという思想の元に活動する人種差別主義の団体
* TAとは
トム・スネドンの地位、DA(distinct attorney:地区検事長)を示唆していると言われている。

地区検事長は、一般人にとって権力の象徴のような地位です。
彼を厳しく批判することは、「権力の腐敗」がはびこっている世界に対する怒りを表現することにつながります。

拝金主義

基本的に何でもお金で買えてしまうこの世界では、お金に対して異常な執着を持つ人間がいます。

莫大な財産と名声を持ち、動くたびに大金が発生するマイケルには、楽をして一度に大金を手に入れようとする人々が常にまとわりつきました。

Anything, anything
Anything for money
Would lie for you
Would die for you  
Even sell my soul to the devil

何でも 何でも
金のためなら何でもする
嘘をついてもいい
死んだっていい
悪魔に魂を売ってもいい

Moneyの歌詞より

なりふりかまわずお金を得ようとする、人間の醜い姿を長年見続けたマイケル、その嫌悪感が限界に達したのでしょう。

環境破壊

Earth Songでは地球の危機を訴え、「みんなどうでもいいと思ってるのか!!ふざけんな〜!!」と叫んでいます。

マイケルはこれまでも、Heal The World, We Are The World, Man In The Mirrorなど「世界を良くしよう」というメッセージソングを発表してきました。
これらの曲は、ユートピアのような優しい雰囲気で、人間同士の世界にフォーカスをあてています。

Earth Songは一転として、この世の終わりみたいなおどろおどろしい雰囲気の作品。
人間だけでなく環境や動物に着目している点で、HIStory以前の楽曲と大きく異なります。

Did you ever stop to notice
All the blood we’ve shed before?
Did you ever stop to notice
This crying Earth, these weeping shores?

もう気にしなくなったのかい
これまで僕たちが流した血のことを
もう気にしなくなったのかい
叫んでいる地球、涙を流している海岸を

Earth Songの歌詞

私たちが日常生活を送っている間に、戦争、動物の乱獲、気候変動、森林伐採などの問題が進行している。
「他人事と思わないで!もっと関心を持って!」と世界に強く呼びかけています。

メディアの狂乱

本来メディア(マスコミ)は、正しくて重要な情報を視聴者に伝える役割を担っています。

しかし実際は、視聴者が注目するネタに偏り、ドラマチックにするために事実をねじ曲げ意図的な演出をすることが当たり前になっています。

Speculate to break the one you hate
Circulate the lie you confiscate
Assassinate and mutilate
As the hounding media in hysteria

嫌いなヤツを壊すために憶測をめぐらし
自分で掴んだデマを流す
傷つけて バラバラにする
しつこいメディアはヒステリー状態

Tabloid Junkieの歌詞

視聴率や購買率を上げて、自分たちの利益を増やすためならどんな手段も使う。
そんなメディアの手口によって、多くの「被害者」が生まれます。

マイケルは何十年もパパラッチの標的にされ、常に追い回されていました。
マスコミはマイケルに関する根も葉もない無数の噂を広めて、彼の気持ちを傷つけました。
Tabloid Junkieでは、そんな非道なメディアの実態を批判しています。

思考停止する大衆

マイケルは、「マスコミの報道を疑うことなく消費し続ける一般人」にも厳しい言葉を向けました。

重要でない、偏った、事実でない情報を野放しにしているのはわれわれ一般市民。
メディアの暴走を止められないのは、私たちが「彼らのやり方」にまんまとハマってエサを与え続けているからです。

Tabloid Junkieのサビでは、マイケルが一般人に向けて「メディア・リテラシー」に関わるシンプルな警告を発します。

And you don’t have to read it
And you don’t have to eat it
To buy it is to feed it
Then why do we keep foolin’ ourselves?
Just because you read it in a magazine
Or see it on the TV screen
Don’t make it factual
Though everybody wants to read all about it

読む必要はない
うのみにする必要はない
それを買えば、ヤツらにエサを与えることになる
なのにどうして自分自身をあざむき続けるんだ?
雑誌で読んだから、テレビで見たからといって
真実にしないでくれ
でも、みんな全部を読みたがるんだ

Tabloid Junkieの歌詞

一般人でも自由に情報発信できるようになった現代では、フェイク情報、詐欺などがますます横行しています。

  • その情報の根拠と信頼性は?
  • どこまでが事実で、どこからが推測や個人の解釈なのか
  • そもそも注目に値する重要な話題なのか

一人一人が「世の中にあふれかえっている情報」に対する姿勢に気をつけなければいけません。
マイケルは、「思考停止にならず、自ら情報を検証しなさい」と呼びかけているようです。

Tabloid Junkieは、もともとTabloid Jungleというタイトルでした。
タブロイド紙(日本で言うスポーツ新聞のようなメディア)の記者は、マイケルという「獲物」を追いかけるハンターのようだと感じられたからです。

マイケルは最終的に“Jungle”を”Junkie”に変更。これはメディア、そして社会全体が、薬物中毒者のように過激な報道を求めている様子を強調するためです。
メディアを批判するだけでなく、それを消費する一般人にも問題意識を持ってほしいという気持ちの現れではないでしょうか。

子供の虐待•ネグレクト

マイケルは「子どもたちに関心を向けよう。愛してあげよう。」というメッセージを繰り返し伝えていました。

少女の孤独で悲惨な死を描いた “Little Susie” は謎に包まれた曲で、どのような意図で収録されたのか、明らかではありません。
私は「愛情を与えらず、適切に養育されていない子供たち」の声を代弁しているのでは?と考えます。

最低限の生活が保障されているはずの日本でも、子供の悲惨な虐待や死亡事件が絶えません。
マイケルは、子供たちの権利がおびやかされている現状に警告を発するためにLittle Susieを書いたのではないでしょうか。

Neglection can kill
Like a knife in your soul

無関心は魂に刺さるナイフのように
人を殺すことすらある

Little Susieの歌詞

Childhoodはマイケルの心の内を語る曲です。

自らの物語を伝えると同時に、「子供らしく過ごす時期を大事にしてあげてね。過ぎてしまったあとは、二度と戻ってこないよ。」と大人たちに訴えているのかもしれません。

People say I’m not okay
‘Cause I love such elementary things
It’s been my fate to compensate
For the childhood
I’ve never known

みんなは僕をおかしいと言う
とても単純なものを愛するから
僕はずっと子供時代の埋め合わせをする運命を背負ってきたんだ
決して経験できなかった

Childhoodの歌詞より

マイケルは、子供たちへの金銭的な支援を生涯継続しつつ、キャリアの後半ではお金で買えない「精神的な支援」に注力しました。

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2001年、イギリスのオクスフォード大学で、マイケルは子供たちの支援に関する講演を行いました。
取り上げた社会問題は、物質的にはおおむね恵まれている、先進国の子どもたちが抱える心の闇。
対策として「世界中の子どもたちが生まれながらに持つべき権利」を提案しました。

I would therefore like to propose tonight that we install in every home a Children’s Universal Bill of Rights, the tenets of which are:
1. The right to be loved without having to earn it
2. The right to be protected, without having to deserve it
3. The right to feel valuable, even if you came into the world with nothing
4. The right to be listened to without having to be interesting
5. The right to be read a bedtime story, without having to compete with the evening news or EastEnders
6. The right to an education without having to dodge bullets at schools
7. The right to be thought of as adorable – (even if you have a face that only a mother could love).

そこで今夜、私はこの「子どもたちの世界共通の権利法」を全ての家庭で取り入れていただくことを提言します。その内容は以下の通り。

  1. 愛情を得ようと努力しなくても、愛される権利
  2. 価値を生み出さなくても、守られる権利
  3. 何も持たずに生まれてきても、価値があると感じられる権利
  4. 面白い話ができなくても、話を聞いてもらえる権利
  5. 夜のニュース番組やイーストエンダーズ(イギリスのテレビドラマ)と争わなくても、寝る前のお話を読んでもらえる権利
  6. 学校で銃の弾丸から逃げ回ることなく、教育を受ける権利
  7. 可愛らしいと思ってもらえる権利(たとえ母親しか愛せないような顔であっても)
2001年 マイケルがオクスフォード大学で行った約40分間の講演より抜粋

食べ物、ワクチン、教科書など、お金で買えるものだけでは子どもたちを助けられない。
身近な人からケアされ、無条件の愛をもらうことが、彼らには不可欠だ。
マイケルはそう感じたのでしょう。

「子どもたちをもっとケアして」というメッセージは、2001年に発表されたアルバム「Invincible」の収録曲、The Lost Childrenへ引き継がれます。

ヒストリーがカオスな理由4つ

HIStoryはマイケルの他のアルバムと比較すると、なんだか混沌として、とらえどころがない印象を受けます。

HIStoryはどうしてカオスに感じられるのか?
その理由を考えてみました。

  • 全体的にネガティブ
  • 時間軸の移動が激しい
  • 曲調の切り替わりが激しい
  • 1曲の中に多くの要素が凝縮

全体的にネガティブ

HIStoryの曲を、「怒っているか、ディスっている曲」「感傷的な曲」「ポジティブな曲」に分類してみると、半数以上が「怒っているか、ディスってる曲」でした。

暴れて叫んで、大荒れしてる時間が多いため、全体的に混沌とした雰囲気になると考えられます。

時間軸の移動が激しい

HIStory収録曲は、制作時期に大きなバラつきがあります。
それぞれの楽曲の制作時期に何十年単位の幅があるので、全体的にガタついた印象になるかもしれません。

Dangerous発表前に作曲もしくは着想を得た曲は、把握している範囲で以下の5曲です。

  • They Don’t Care About Us
  • Earth Song
  • Come Together
  • Little Susie
  • Smile

Dangerous(前作)の候補曲が2曲採用された

They Don’t Care About UsEarth Songは、どちらも前作「Dangerous」の候補曲でした。
つまり、Bad期に制作された曲です。

定番の名曲をカバー 

HIStoryでは、マイケルにはめずらしくカバー曲が2曲入っています。
ビートルズのCome Together、そしてチャールズ・チャップリン作曲のSmileです。

Come Togetherのオリジナルは1969年に発表、 マイケルのヴォーカルは1988年に収録され、映画「ムーンウォーカー」に使用されました。

Smileはもともと、1936年に公開された「モダンタイムズ」という映画の使用曲。
あらゆるところでカバーされまくっている名曲で、日本で言う「上を向いて歩こう」的なポジションではないでしょうか?

もともとは音楽のみで、歌詞がついたのは1954年です。
ちなみにマイケルはChildhoodのレコーディングと同じ日に、Smileを収録しました。

Come TogetherとSmileは、いずれもHIStoryが発表された時点で「往年の名曲」だったため、新曲の中では浮いてしまうかもしれません。

Little Susieを書いたのは20歳ごろ?

Little Susieは、なんとマイケルが1979年に着想を得た曲です。
これは、Off The Wallを発表した時期と同じ…

え、全く作風が違いますけど…?
ちょっと末恐ろしいですね😅

発表する新曲は数曲だけの予定だった

HIStoryを制作するとき、はじめはベストアルバムに新曲を数曲だけ付け足す予定でした。
しかし制作過程でどんどん曲数が増え、結果的に2枚組アルバムとなりました。

このような経緯なので、最初からフルアルバムを想定して制作した作品と同レベルの統一感に仕上げるのは難しいかもしれません。

曲調の切り替わりが激しい

HIStoryを順番に聞いていると、前の曲の余韻にひたりたい気持ちなのに、完全に違う曲調になってうろたえる場面があります。

ちょっと…ついていけない…

私がそう思ったポイントを2つ挙げます。

Earth Song からD.S.

Earth Songは、大自然を連想する壮大な名曲。
「魂の叫び」のようなラストは大迫力で、マイケルの声とアンドレ・クラウチコーラス隊の美しいバックコーラスに圧倒されます。

「ほわわわ…」となっているところに飛び込んでくるD.S.の鋭いギターイントロ。
Earth Songとは真逆の、相当個人的な怒りをぶつけにくるマイケル。

この切り替わりはかなり過激です。

HIStory ~ Little Susie ~ Smile

You Are Not Alone, Childhoodとバラードが続いたあとのアルバム後半、
Tabloid Junkie, 2Badでガンガンにストレスを発散したあと、力強く前向きなHIStoryに続きます。

Every day, create your history
Every path you take, you’re leaving your legacy
Every soldier dies in his glory
Every legend tells of conquest and liberty

一日一日の積み重ねが君の歴史を作っている
一つ一つ 君の選んだ道が 痕跡を残していく
兵士たちはみな それぞれ栄光のなかで死ぬ
全ての伝説は 征服と解放を物語る

HIStoryの歌詞より

停滞し、もがいているように思えても、私たちは一歩ずつ進んでいる。
その積み重ねが、人類の大きな歴史につながっている…

曲の最後に、人類で月に初めて着陸した宇宙飛行士 ニール・アームストロングの有名な言葉
「これは一人の人間にとっては小さな一歩、人類にとっては偉大な飛躍である」
が収録されています。

泥臭い日常からどんどんカメラワークが「引き」になり、最後には宇宙から地球の全体像を傍観しているような、すがすがしい気持ちに。

そんな中、次に流れてくるのはシリアスなクラシック音楽、そして不気味なオルゴールと少女の鼻歌。
え、誰かがスージーちゃんを殺したって??

なにこれ
怖い…

続いてアルバムの締め、“Smile”で心温まる雰囲気になるのですが、Little Susieが怖くて悲しすぎて、「人生辛くても笑おう!」というメッセージが頭に入ってこないままアルバムが終わってしまう。

振れ幅の大きすぎるマイケルワールドについていくのは、なかなか難しいです。

1曲の中に多くの要素が凝縮

HIStoryでは、1曲ごとにガラッと雰囲気が変わるだけでなく、1つの曲中に多くの要素が詰め込まれています。

その代表例が、タイトル曲のHIStory

  • クラシック音楽(キエフの大門)のオーケストラ演奏
  • マーチングバンド演奏
  • 偉人たちのスピーチ音源
  • 過去の日付、出来事を読み上げた音声
  • 苦しい登山のようなヴァース(Aメロ)
  • 急に視界が開けたようになめらかなブリッジ(Bメロ)
  • 人類の歴史を振り返る、壮大なコーラス(サビ)
  • Boyz Ⅱ Men, アンドレ・クラウチコーラス隊によるバックコーラス
  • マイケルからバトンを受け継ぐような女の子の歌声(Heal The Worldと同じ演出)

上記すべてが1曲に凝縮されています。
マイケルの作品全体のなかでも、かなり実験的で冒険的な曲と言えるでしょう。

他にも、HIStoryには

  • ロック、ゴスペル、ブルース、オペラの要素が入ったEarth Song
  • ファンク、ロック、ヒップホップ、ゴスペルをミックスした2Bad

といった、非常に複雑でユニークな楽曲が収録されています。

ヒスマ(ヒストリー期のマイケル)が素敵すぎる

最後に、私が愛してやまない「ヒスマ」の魅力をご紹介します。

マイケルは、HIStory発表からHIStoryワールドツアー終了まで(1995年6月〜1997年10月)、とても精力的に活動していました。
ヒストリー期のマイケル、略して「ヒスマ」は、マイケルファンから熱烈に愛されています。

そんなヒスマの魅力を以下の4つに分けてみました。

  • 力強いダンスとむっちりボディー
  • かわいいメイク
  • 似合いすぎるキラキラ衣装
  • 穏やかさと包容力がアップ

ヒスマの良さにハマったら、あなたはもうマイケルのとりこです。

力強いダンスとむっちりボディー

HIStory期のマイケルは、ダンススタイルの幅が広がり、明らかに筋肉量が増えました。

マイケルのダンスといえば

  • 速くて
  • するどく、キレキレで
  • 指先まで美しく
  • 「体重100gぐらいなの!?」と思うほど軽快な身のこなし(重心移動)

というイメージです。
HIStory期のパフォーマンスでは、そんなキレキレの動きも見せつつ、より力強く、重厚感がある動きを取り入れています。

具体的には、「ポップ」「アニメーション」というジャンルの振り付けが増えました。
マイケルの動き方は一般的なダンサーとは一味違い、内臓ごと強く震わせているような凄みがあります。

たとえば、HIStory発表から数ヶ月後に披露した「MTV Video Music Awards(1995年9月)」のパフォーマンスは、伝説的にかっこいいショーとして語り継がれています。

マイケルのダンススタイルを探究しているダンサーU-keyさんが、このダンスの凄さを以下の動画で分かりやすく解説してくれています。

1995年のマイケルパフォーマンスの凄さを解説する動画
あおあり
あおあり

「スーツの上からでも分かる強いヒットは岩をも砕けそう」という例えは分かりやすいし、

マイケルの体幹がいかに強いか、実践して説明してくれてるところが素晴らしい👍

こっそり筋トレしたのか、ダンススタイルの変化によるものか、ヒスマはどんどんガタイが良くなります。

Embed from Getty Images

マイケルが20代の頃の「スリラー」や「スムーズクリミナル」のミュージックビデオと比べると、明らかにお尻がムチムチに。

手足が小枝みたいに細かったスリラー期から、随分たくましくなりました。

かわいいメイク(つけま&チーク)

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ヒストリー期のマイケルは、つけま盛り盛りで、超かわいい赤ピンク色のチークをつけていることが多いです。(もちろん日によって変わります)

このメイクは華やかさと柔らかさがあり、個人的にとても好き💕

キラキラ衣装が似合いすぎ

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HIStoryツアーのオープンング衣装は、全身が光沢感のある金色&銀色の生地です。
まぶしすぎるド派手な衣装も、ヒスマが着ればとってもお似合い😍

Jackson5メドレーまで、ツアーの前半はずっと金パンコーデで楽しませてくれます。
普通の人だと「え?どうしちゃったの?」と心配されそうなテカテカ衣装に、全く負けていないマイケル。

あおあり
あおあり

めずらしくネックレスをつけているのもいいよね♪

穏やかさと包容力がアップ

ヒスマの笑顔は、百合のお花のような清潔感と華やかさで、心が洗われます。

このころマイケルは家族が増え、プライベートが充実していました。

  • 1994年5月 リサ・マリーと結婚(2人の連れ子を可愛がった)
  • 1996年1月 リサと離婚
  • 1996年11月 デビー・ロウと結婚
  • 1997年2月 長男プリンスが誕生
  • 1998年4月 長女パリスの誕生

パリスが生まれた翌年、マイケルはデビーと離婚してしまい、残念ながら結婚生活は長く続きませんでした。
しかし家庭を持った影響か、なんとなく表情の安定感が増し、より大人っぽく、包容力がある雰囲気になったと考えます。

まとめ

この記事ではマイケル・ジャクソンのアルバム「HIStory」について記載してきました。

  • HIStoryはマイケルの激しい主張を全面に出したアルバム
  • 怒りや悲しみが渦巻くなかに美しさを感じる
  • 現代にも通じるメッセージが多く含まれている
  • ヒスマ(ヒストリー期のマイケル)はとても魅力的
あおあり
あおあり

マイケルの公式Youtubeで、全ての曲・ミュージックビデオが視聴できるよ。
これは必見!!

まだ聞いたことがない人も、何回も聞いてきた人も、HIStoryという作品をもっと楽しんでいただけたらうれしいです。

読んでいただき、ありがとうございました。

参考資料

1990年生まれ。マイケルファン歴20年ほど。
もはや彼が脳内に住んでいる。
NHK BSのテレビ番組「熱中夜話 マイケルジャクソンナイト」にファンの1人として出演した経歴あり。
ファンの方も、そうでない方も楽しんでもらえる記事を書きたいです。

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