They Don’t Care About Usの意味と背景|ブラック・ライブズ・マターで再評価

こんにちは。あおありです。

この記事では、マイケルジャクソンの楽曲 「They Don’t Care About Us」音楽性、メッセージ、作曲の背景、ミュージックビデオ、ライブパフォーマンスについて記載します。

この曲はブラック・ライブズ・マターに関連して再評価されているらしいけど、
どういう関係があるの?

あおあり
あおあり

「警察の有色人種に対する暴行」を示唆する表現が多いから、

ブラック・ライブズ・マターのテーマソングとして使用されることがあるんだ。

有色人種の差別を批判する歌ということ?

あおあり
あおあり

有色人種だけでなく、

「不当に攻撃されている人」「人権を大切にされていない人」

全般の怒りと悲しみを表現する歌なんだよ。

They Don’t Care About Usは、1995年のアルバム「ヒストリー」に収録されました。

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キャッチーなビートと、マイケルの明るく澄んだ声が聞いていて心地よく、魅力的な楽曲です。

しかし、不公平な社会に対して激しく怒りの抗議をする、強いメッセージソングでもあります。

They Don’t Care About Usのメッセージ
  • 不当に攻撃され、人権を踏みにじられている人たちの怒りの抗議
  • あらゆる差別は憎悪と偏見に基づいている
  • どんなに辛くても絶対に負けない。戦い続ける。

They Don’t Care About Usは、あらゆる不当な扱いに苦しんでいる人々の声を代弁しています。

なかでも「アメリカにおける(有色人種に対する)警察の暴行」を大きく取り上げています。

そのため、「ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter)」を象徴する曲として、現在も根強い人気があります。

また、マイケル自身が1993年に提訴された「児童性的虐待疑惑」への怒りが強く反映されています。

ミュージックビデオ「ブラジルバージョン」「監獄バージョン」の2種類あり、
ライブパフォーマンスは衣装も振り付けもガラッと変わります。

この記事では、

  • They Don’t Care About Usの音楽性
  • 歌詞のメッセージとその背景
  • ブラジルバージョン、監獄バージョンのミュージックビデオ
  • ライブパフォーマンス

について詳しく記載します。

美しさと荒々しさのバランスが絶妙なサウンド

They Don’t Care About Usのサウンドはとても魅力的で、歌詞の意味が分からなくても楽しめます。

まず、シンプルでキャッチーなパーカッションが強烈に飛び込んできます。

次に、優美で滑らかなストリングス(ヴァイオリン的な音)が加わって厚みが増します。

さらに、中盤からエレキギターが目立ち、刺激的でアグレッシブなサウンドになります。

言葉遊びのように韻を踏んだ歌詞はリズミカルで心地よいです。

ンヘッ、ェーァヘッ、ビバディ、ーンベッッ

上記のように、一つ一つの単語を強調して、激しく切り込むように歌っています。

マイケルの声は怒りでゆがんでいますが、高音がすごく綺麗で、心が洗われる感覚になります。

あおあり
あおあり

激おこでも美声なマイケル…

同時期に発表されたStranger In Moscow繊細で悲しげな歌い方と比較すると、表現の違いがわかりやすいです。

個人的に、2番の始まり〜終わったあとのギターパートまでが一番好きです。

マイケルの吐息とギターの早弾きで構成された、印象的な繋ぎから2番がスタート。

美しいコーラスが加わって、神聖な雰囲気になります。

サビの終わりで盛り上がりが頂点に達した時、夢からさめるように強烈な叩打音が鳴って、ゴリゴリえぐるようなギターソロが飛び込んできます。

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この「美しさと荒々しさのバランス」が絶妙で、マイケルにしかできない表現だと思います。

They Don’t Care About Usのメッセージと作曲された背景

They Don’t Care About Usの歌詞は、和訳を読んでも初見で理解するのは難しいです。

私が初めてこの曲を知ったのは中学生のとき。背景を知らない状態で歌詞を読んでも意味がわかりませんでした。

スキンヘッド? ドッグフード? バンバン?
「僕らのことなんてどうでもいい」って何の話?

キャッチーでポップなメロディーなので、明るい歌に聞こえるかもしれません。

しかし実際は怒りと抗議を示す歌です。

タイトルの “They Don’t Care About Us”(彼らは僕たちのことを大事に思っていない)は、
「政府・警察・司法は、一般市民のことなんてどうでもいいんだ!」という怒りの声です。

Theyとは

政府、警察、司法など、本来は一般市民を守るべき組織

Usとは

不当に攻撃され、人権をないがしろにされている状態で放置されている人々

「不当に攻撃されている人・人権を大切にされていない人」の苦しみを表現するなかで、とりわけ「警察による(有色人種への)暴力」を示唆する表現が多いです。

They Don’t Care About Usは、1991年に起きた「ロドニー・キング事件」(警察の暴行を隠し撮りされた映像が拡散して大きな社会問題となった事件)にインスパイアされたと言われています。

その後、1993年に起きたマイケルの児童性的虐待疑惑を経て、マイケル自身の強い怒りが反映されることとなります。

この章では

  • アメリカにおける「(有色人種に対する)警察の暴力」の深刻な現状
  • 作曲のきっかけになったと言われているロドニー・キング事件
  • 1993年のマイケル児童性的虐待疑惑

以上の背景を踏まえて、「They Don’t Care About Usに込められたメッセージ」を説明します。

「(有色人種に対する)警察の暴力」はアメリカで深刻な社会問題

「警察の暴力」(Police brutality)とは、警察が一般市民へ過度な弾圧や暴力を加える社会問題です。

とくに有色人種への被害が多く、裁判で警察や白人側に有利な判決が下される人種差別が問題になっています。

具体的には以下のような事例があります

  • 警察官が無抵抗な容疑者を殴ったり蹴ったり首を絞めたりする
  • 警察官が武器を持たない容疑者を殺害する
  • 明らかに過度な暴行をした警察官に対して、裁判で無罪、もしくは不自然に軽い刑罰が下される

日本では大きな問題になっておらず、あまりピンとこない方が多いかもしれません。

本来、警察は人々の生活をまもるために、犯罪や暴力と戦う組織のはずです。

しかし、いくつかの国では警察の腐敗と暴力がとても深刻で、一般市民は長年苦しんでいます。

毎年1000人以上が警察官に殺されるアメリカの現状

アメリカでは毎年1000人以上が警察官に殺されています。

The Guardianは、2015年・2016年の間に警察官に殺されたアメリカ人の記録を公開しています。

この調査では、人口100万人に対して警察官に殺される市民の人数に、人種間で大きな差があることが示されています。

人種人数
ネイティブアメリカン10.13
黒人6.66
ヒスパニック/ラテン3.23
白人2.9
アジア人/太平洋諸島の住民1.17
人種別、人口100万人に対して警察に殺害された市民の数(2016年) The Guardianより

アメリカでは銃を持っている市民が多いから、

周囲の人の安全を確保するためにやむなく殺害してしまうこともあるのでは?

「容疑者を殺害する」という警察の判断が正しいかを検討するとき、「容疑者が武装していたかどうか」は大きな争点になります。

容疑者が拳銃やナイフを使って誰かを襲っている場合、安全に身柄を拘束するのは難しいからです。

The Gardianの調査では、犠牲者一人ひとりの簡単な状況と、「どんな武装をしていたか」が掲載されています。

参照すると“unarmed”、つまり武器を持っていなくても殺されている例が多いことが分かります。

そのため、本来は殺されるべきでない人達の命がたくさん奪われている可能性が高いです。

上記の画像では、軽装の黒人女性後手に手錠をかけられ、1人の警察官が拳銃を胸に突きつけています。

それを4人の警察官が囲んで見ています。どのような状況か読み取れませんが、明らかに過度な脅迫です。

有色人種と白人の扱いに露骨な差

有色人種と白人の間で、刑罰の重さに不自然な差がある点も問題になっています。

上のツイートは、「人種間で、(罪に対する)刑罰の不公平がある」ことを伝えるため、2020年にインターネットで広まった画像です。

日本語訳は以下の通りです。

Shanesha Taylor
(黒人)
Catalina Clouser
(白人)
ホームレス
アリゾナ州の母
就職の面接を受ける間、
2ヶ月と6歳の子を車で待たせた
アリゾナ州の母
(マリファナで)ハイになって生後2ヶ月の子供を
車の屋根に乗せて12マイル運転し、
子供が落下した
収監・子供取り上げ執行猶予
インターネット上で広まった画像の日本語訳

2人の状況と判決を見比べてどう感じますか?

もちろん、子供を車の中に放置するのは悪いことですが、右のCatalinaさんの方が「悪質な犯行なのに刑が軽い」と感じるはずです。

  • 同じアリゾナ州で法律は共通のはずなのに、この違いは何だ。
  • 明らかにCatalinaの罪の方が重いのでは?
  • 子供から引き離されたShaneshaがかわいそう

インターネット上ではShaneshaさん(黒人)に対する同情の声と、「アメリカでは黒人の人権が粗末に扱われている」という怒りの声が上がりました。

このように、「アメリカにおける白人と有色人種の露骨な差」を訴えるメッセージは、インターネット上に大量に投稿されています。

同じ人間なのにこんなに酷い差別をするなんて、
世の中は腐ってる!!

あおあり
あおあり

ちょっと待って。
こういった投稿も、作者の意見を主張するために

誇張されていたり、嘘が混じっていることがあるよ。

いくつかのニュース記事を参照すると、最終的にShaneshaは親権を取り戻し18年の執行猶予、
Catalinaは3ヶ月の収監、16年の執行猶予
となったそうです。

公平な判決かと言われると疑問が残りますが、少なくともShaneshaさんが親権を取り戻せて良かったですね。

作曲に関連している?「ロドニー・キング事件」

They Don’t Care About Usのメッセージは、1991年にアメリカで起きたロドニー・キング事件の影響を受けていると言われています。

ロドニーキング事件の概要
  • 1991年3月
    警察の暴行

    黒人のロドニー・キング(前科あり執行猶予中)がスピード違反で警察に呼び止められる。
    ロドニーは逃走を試みるが、パトカーに追跡され停車。
    車を降りた後、4人の警察官(うち3人が白人)から15分間に渡り暴行。ロドニーは重傷を負う。

  • 映像が全世界へ広がる

    暴行の様子を通行人が隠し撮りしていた。
    その映像が世界中で放送され、大きな反響を呼ぶ。
    国民の間で警察に対する不満が広がった。

  • 1992年4月
    警察官の無罪判決

    ロドニーを暴行した4人の警察官が無罪となる。
    陪審員は12人中9人が白人だった。

  • ロサンゼルス市民の暴動

    判決から間も無くして市民の怒りが爆発
    5日間に渡り暴動が起きる。
    多くの建物が壊され、燃やされ、何の罪もない人々も含めて多数の死傷者が発生。

参考記事When LA Erupted In Anger: A Look Back At The Rodney King Riots

現在日本でもよく知られている「ブラック・ライブズ・マター運動」と共通点が多いですが、この暴動はもっと激しく、悲惨でした。

建物が壊され放火され、死傷者が出る恐ろしい事態となりました。

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They Don’t Care About Usは、マイケルが1991年に発表したアルバム「デンジャラス」の収録候補曲でした。
結果的に収録されず、デンジャラスでは「警察の暴力(police brutality)」を大きく取り上げませんでした。

しかし、2曲目のWhy You Wanna Trip On Meで、現代人が抱える社会問題の一つとして言及しています。

We’ve Got Drug Addiction
In The Minds Of The Weak
We’ve Got So Much Corruption
Police Brutality

We’ve Got Streetwalkers
Walkin’ Into Darkness
Tell Me
What Are We Doin’
To Try To Stop This

心の弱さから、薬物中毒になる人がいる
政治の腐敗と、警察の暴力も酷すぎる
暗がりの中へ歩いていく売春婦
教えてくれ
これを止めるにはどうしたらいいんだ

マイケルジャクソン/Why You Wanna Trip On Meの歌詞より


関連記事 【ハマりすぎ危険】マイケルジャクソンのアルバム「デンジャラス」の魅力4つ

アルバム「デンジャラス」の発表後まもなく、マイケル自身が警察に捜査される立場になります。

1993年の児童性的虐待訴訟を受けて、They Don’t Care About Usはマイケルにとって一番辛い出来事への怒りを反映させた曲に変化します。

93年のマイケル訴訟、警察の過剰な捜査

1993年、ジョーダン・チャンドラーという少年がマイケルに性的に虐待されたという訴訟を起こしました。

1993年マイケル性的虐待疑惑の概要
  • 1992年夏
    きっかけ:車の故障

    マイケルの車が故障。レンタカー業をしていたデイヴ・シュワルツが車を手配する。

  • 1993年初頭
    家族ぐるみの付き合い

    マイケルがデイヴ・シュワルツの家族を自宅へ招待する。
    デイヴの妻(ジューン・シュワルツ)と、ジューンの連れ子であるジョーダン・チャンドラー少年、ジョーダンの実父エヴァン・チャンドラーも含め、家族ぐるみで親しくなる。
    ジョーダン少年の実の両親であるエヴァンとジューンは既に離婚しており、当時ジョーダンは母のジューンと暮らしていた。

  • エヴァンの苛立ちと疑惑

    ジョーダンとマイケルは頻繁に遊んでいたが、マイケルはエヴァンを避けるようになった。
    自分が除け者にされていることに対しエヴァンは苛立ち、「マイケルがジョーダンと不適切な関係を持っているのでは」と疑い始める。

    歯科医だったエヴァンは、ハリウッド映画の脚本家になる夢を持っていた。エヴァンはマイケルに「映画のための出資」を求めていた。

  • 1993年7月
    推測に基づく書類・金銭の要求

    エヴァンは「マイケルがジョーダンに対して性的接触をしている懸念」を示す書類を作成し、ホテルでマイケル達とミーティングを行う。この書類は推測に基づいており何の根拠もなかった。
    ジョーダンとマイケルは「不適切なことは何も起きていない」と否定。
    その後エヴァンは再度マイケル関係者と会い、2000万ドルを要求するが、拒否される。

  • 1993年8月
    ジョーダンの証言をもとに捜査開始

    エヴァンはジョーダンを自身の歯科医院へ連行。鎮静薬のアミタールを投与した後、ジョーダンから「マイケルからの不適切な接触があった」という証言を引き出した。
    この証言をもとに市の職員へ通報、警察の捜査が開始される。(8月17日)
    マイケルの複数の自宅から、写真やビデオテープなどが大量に押収された。
    この情報がリークし、8月24日頃からテレビや新聞などで連日大きく報道される。

  • 1993年8月
    デンジャラスツアーの再開と中止

    マイケル、8月24日からタイのバンコクでデンジャラスツアー第3部を開始。アジア(日本を含む)、ロシア、中東、南米、オーストラリアを周り、完遂する予定だった。
    しかし、体調不良のため何度か公演をキャンセル。鎮痛剤依存症に苦しむ。
    11月のメキシコ公演を最後に、デンジャラスツアーの残りの日程をキャンセルし治療に専念することを発表。

  • 1993年末
    警察の身体捜査

    警察により、マイケルを裸にした身体捜査が行われる。
    マイケルは「身体捜査は大きな苦痛だった。それでも自分の無実を証明するためなら警察に従う」と語った。
    過剰な捜査の結果、マイケルの容疑を証明する根拠は一つも見つからなかった。

  • 1994年1月
    和解成立

    一連の事件が示談により解決する。マイケルはチャンドラー側に多額の示談金(日本円にして15億円以上と言われている)を支払った。
    マイケルは裁判で無実を証明したかったが、
    ・絶対に無罪判決が出る保証はないこと
    ・裁判が7年ほど続くかもしれないこと
    ・マイケルの体調不良  などを考慮し、示談解決を選んだ。

一連の出来事はマイケルの健康を害し、彼のイメージに大きな傷をつけました。

関連動画 スクエア・ワン(1993年のマイケル児童性的虐待疑惑について詳細を取材したドキュメンタリー。設定 → 字幕 → 日本語で日本語字幕が表示される)

卑劣な手段で引き出された証言

この訴訟を主導したのは、少年ジョーダンの実父エヴァン・チャンドラーです。

エヴァン・チャンドラー

  • ジョーダンの実父。ジョーダンの母ジューンとは離婚していたが、交流は続いていた。
  • 歯科医として働きながら、ハリウッド映画の脚本家を夢見ていた。
  • マイケルに「映画のための出資」を求めたが、次第に避けられるようになる。
  • ジョーダンに「マイケルとの不適切な関係」を告白させるため何週間にも渡って尋問。最終的に鎮静薬(アミタール)を投与した後に証言を引き出し、マイケルを提訴する。
  • 多額の示談金を勝ち取ったあと、整形手術を繰り返して生活する。
  • 2006年 ジョーダンから「バーベルや杖で暴行を受けた」と提訴される。
  • 2009年11月(マイケル急逝の約5ヶ月後)、自宅で孤独に拳銃自殺。精神疾患の治療中だった。

まだ子供だったジョーダンは誰にも守られず暴行され、薬剤を投与され、命の危険を感じていたはずです。

そのような状態で話した内容に信憑性はありません。

しかし、脅迫して引き出したジョーダンのわずかな証言をもとに、告発が行われました。

金に群がるマスコミ・過剰な警察の捜査

マスコミはこの事件を連日大きく報道し、事実無根の情報を平気で流して巨額の利益を得ました。

マイケルの関係者に近づき、数十万ドルの大金をちらつかせて「マイケルに不利な嘘のエピソード」を語らせようとしました。

マイケルを小児性愛者として報道すると、視聴率が跳ね上がり、新聞や雑誌が飛ぶように売れたのです。

警察によるマイケルの家宅捜査では、ドアを壊しながら家の中にあるものを根こそぎ持ち去られました。

大切な思い出の品や個人的な日記なども奪われました。

身体捜査ではマイケルは裸にされ、身体中の写真を撮られたり触られたりしました。

警察の過剰な捜査の結果、マイケルの容疑を証明する証拠は一つも見つかりませんでした。

“After millions of dollars were spent by prosecutors and police departments in two jurisdictions, and after two grand juries questioned close to two hundred witnesses, including thirty children who knew Jackson, not a single corroborating witness could be found.”

2つの管轄区域で検察と警察が何百万ドルも費やし、
2つの大陪審(12〜23人の陪審員で構成される機関)が、ジャクソンと面識のあった30人の子供たちを含む200人近い証人に質問した結果、
裏付けとなる証拠は一つも見つからなかった。

Mary Fisher, “Was Michael Jackson Framed?,” GQ, October 1994.

マイケルは体調不良に苦しみツアーを中断

この疑惑でマイケルは心に深い傷を負いました。

事件が起きた時、マイケルはデンジャラスワールドツアーの最中でした。

アジア(日本も含む)、ロシア、中東、南米を回り、現地の孤児院や病院を訪れて寄附して回っていました。

ワールドツアー中、イスラエルの病院で子供たちを励ますマイケル(1993年9月)

タイトル曲”Dangerous”のシングルカットやミュージックビデオも予定されていました。

しかし体調を崩し、鎮痛剤依存症になり、数年間にわたって積み上げてきたデンジャラス関連のプロジェクト中断を余儀なくされました。

怒り、やるせなさ、混乱が渦巻くマイケルの心

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マイケルは精神と健康を害され、キャリアを汚され、世界を良くするために行っている事業を中断させられました。

一方、チャンドラー家は卑劣な手段で子供から虚偽の証言を引き出し、日本円にして15億円以上の和解金を手に入れました。

マスコミ側も事実無根の報道を連発して莫大な利益を得ました。

マイケルの心は、怒り、やるせなさ、混乱でいっぱいだったはずです。

  • 警察と司法は、人権を守るのが仕事じゃないのか?
  • もっと困っている市民にお金と労力を使うべきでは?
  • 本当に裁かれるべきなのはエヴァンやマスコミじゃないのか?
  • 神様はこの状況をどう見ているのだろうか?

They Don’t Care About Us、そして同時期に発表された他の曲は、地獄の苦しみを経験したマイケルの心を映し出す作品でもあるのです。

They Don’t Care About Usのメッセージ

They Don’t Care About Usが生まれた背景には、上記に記載した「(有色人種への)警察の暴力問題」「マイケル個人が経験した辛い出来事」があります。

マイケルはこの曲について以下のようなコメントを出しています。

The song in fact is about the pain of prejudice and hate and is a way to draw attention to social and political problems.

実際のところ、この歌は偏見と増悪が引き起こす痛みがテーマだ。そして社会的・政治的問題に目を向ける手段でもある。

I am the voice of the accused and the attacked. I am the voice of everyone.

僕は糾弾され、攻撃されている人達の声だ。みんなの声だ。

It is about the injustices to young people and how the system can wrongfully accuse them.

これは若者への不当な扱いと、この社会の仕組みがどのように彼らに誤った攻撃をするかを示している。

マイケルジャクソンのコメント抜粋(出典:The New York Times

マイケルは、以前から社会問題に対する強いメッセージを自身の曲で伝えていました。

しかし、They Don’t Care About Usはもっと直接的で感情的な表現に変化しています。

歌詞から読み取れるメッセージを見てみましょう。

まず、警察の暴行についてはっきり言及しています。

Tell me what has become of my life
I have a wife and two children who love me
I am the victim of police brutality,

僕の人生に何が起きたんだ
僕を愛する妻と、2人の子供がいるのに
僕は警察の暴行の犠牲者だ

政府、警察、司法は、本来人々の生活を守るために権力を行使する機関のはず。

それにも関わらず、理不尽な扱いを受け、権利を踏みにじられている人達が無視されている。

「自由の国」を謳っていながら、内情は全く異なっているアメリカの矛盾に強い憤りを感じています。

Tell me what has become of my rights
Am I invisible because you ignore me?
Your proclamation promised me free liberty

僕の権利はどうなってるんだ
君に無視されている僕は、居ないも同然ってことか?
僕の自由と解放を約束すると宣言したじゃないか

アメリカを象徴するスターであるマイケルは、歴代の大統領ともたびたび関わり、良好な関係を築いてきました。

マイケルは何度かホワイトハウスに招かれている。レーガン、ブッシュ(パパの方)、クリントン元大統領から表彰されている。

アメリカという国で生まれたからこそ、マイケルは世界で活躍するスターになれたのかもしれません。

そのため、政府を名指しで批判することに抵抗があるけれど、どうしても我慢できない。やっぱり間違っている。という気持ちが滲み出ています。

You know I really do hate to say it
The government don’t wanna see
But if Roosevelt was living
He wouldn’t let this be

こんなことを言うのは本当に嫌なんだけど
政府は認めなくないんだ
でも、ルーズベルトがもし生きていたら
彼はこの状況を放置しなかっただろう

「国民のために」なんて嘘だ。政府も、警察も、司法も、僕たちの気持ちなんて考えていない。どうだっていいんだ。

やるせない怒りが、タイトルである”They Don’t Care About Us”(ヤツらは僕たちのことなんてどうでもいい)に集約されています。

All I wanna say is that
They don’t really care about us

僕が言いたいのは、「ヤツらは僕たちのことなんて正直どうでもいい」ってことだ。

マイケルは、このような不当な暴力の根源を「偏見と増悪(prejudice and hate)」と考えています。

I’m tired of being the victim of hate

増悪の犠牲になるのはうんざりだ

怒りの抗議に加えて、「攻撃されても、脅迫されても決してくじけない。負けない。」という固い決意を表明しています。

Beat me, bash me
You can never trash me
Hit me, kick me
You can never get me

叩いても 糾弾しても
僕を葬ることはできない
殴っても 蹴っても
僕を討ち取ることはできない

市民の怒りが爆発した1992年のロサンゼルス暴動では、過激な破壊行為で死傷者も発生してしまいました。

マイケルは暴力の連鎖を断ち切り、毅然とした態度で平和的に戦う姿勢を示しています。

ブラジルバージョンのビデオ:明るくて美しい映像

They Don’t Care About Usのミュージックビデオには「ブラジルバージョン」と「監獄バージョン」の2種類があります。

ブラジルバージョンは、マイケルが大勢の一般人と交流しながら街中を歩き、自由に踊っています。

They Don’t Care About Us ブラジルバージョン 公式Youtubeより

ちなみに、昼間に軽装で一般道を歩いているマイケルのビデオは珍しいです。

同時期に発表された他のビデオは合成背景や室内の撮影中心なので、美しい街の風景が特に印象的です。

マイケルっぽくない服?でもかっこいい!

マイケルはTシャツにジーパン姿で、ちょっと珍しいファッションです。

撮影中の様子:監督のスパイク・リーと共に

この時マイケルの年齢は30台後半。Tシャツの裾をジーパンにインした姿がこんなにかっこいいアラフォーは奇跡です。

あおあり
あおあり

眺めてるだけで幸せ

ブラジルの明るい太陽、パッション溢れる人々のエネルギーを受けて自由に踊るマイケルの姿はここでしか見られません。

個人的に印象的な部分は、

I look to heaven to fulfill its prophecy(僕は神の予言を実行するために天を仰ぐ)

と歌っている部分の、空に視線を向ける一瞬の表情です。

悲しくも美しい視線と、きれいな手の形がたまらないです。

同じルーツをもつ「Olodum」と共演

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曲にマッチしたドラム演奏を披露しているのは「Olodum」というバンドです。

Olodumは、ブラジルのバイーア州を中心に活躍しているアフリカ系ブラジル人の団体です。

マイケルと国籍は違いますが、「アフリカから奴隷として連行された人々の祖先」というルーツを共有しています。

共通の故郷を持つマイケルとOlodumはお互いに共鳴しあい、大家族のように息ピッタリです。

美しい撮影地 実は治安最悪だった

このビデオは、ブラジルのドナ・マルタサルヴァドールの2箇所で撮影されました。

ドナ・マルタは首都リオデジャネイロの一部で、大きなキリスト像や、すり鉢の形をした山などが有名な観光地でもあります。

しかし、撮影当時はドラッグ売りがたむろするような治安最悪のスラム街でした。

ドナ・マルタに住む人達も、「政府に見放されている。ないがしろにされている。」という不満をもっていました。

「They Don’t Care About Us(やつらは僕たちのことなんてどうでもいい)」は、ドナ・マルタに住む人たちの声でもあるのです。

そんな治安の悪い場所に住む人達も、早起きして街を掃除してマイケルを迎えました。

マイケルの訪問をきっかけにこの地域が整備され、現在ではかなり治安が改善しました。

マイケルが亡くなってすぐ、感謝の意味を込めてリオデジャネイロ市はこの地にマイケルの像を作りました。

リオデジャネイロ、ドナ・マルタにあるマイケルの像

参照記事 Michael Jackson’s music had impact around the globe

監獄バージョンのビデオ:曲のメッセージをダイレクトに表現

監獄バージョンのビデオはとてもシリアスです。

監獄バージョンのミュージックビデオ
  • 手錠をかけられたマイケルは「怒りをあらわにする囚人」を演じる。
  • 壁のモニターに「不当な暴力を振るう人、その被害者」の映像が映る。(中国の天安門事件、ロドニーキング事件、KKKの映像など)
  • 他の囚人たち(有色人種の比率が高い)と共に机を叩き、抗議している。
  • 周りで監視している警官たちは無表情で、囚人たちの訴えを聞こうとしない。

この映像は、They Don’t Care About Usで訴えている社会の惨状をダイレクトに表現しています。

監獄バージョンのビデオは、発表直後に「暴力的な表現が多い」という理由で放送が厳しく制限されました。

10年以上もの間ファン以外に知られることなく、マイケルが亡くなった後にようやく再公開された経緯があります。

ライブパフォーマンスは差別と闘う硬い決意を表現

They Don’t Care About Usはヒストリーワールドツアーでも披露されました。

このパフォーマンスで、マイケルはバックダンサーと共に、軍隊を連想させる緊張感のあるダンスを踊っています。

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力強く荘厳な雰囲気で、「自分達は決して諦めない。不条理な社会と戦っていく。」という強い決意と覚悟が現れています。

マイケルの亡くなる直前のリハーサル映像をまとめた映画「This Is It」で、They Don’t Care About Usのパフォーマンスは更にパワーアップしています。

音楽が始まる前に「Drill」と呼ばれる数分間のダンスパートがあり、この曲をより一層引き立てています。

ダンスパートに加えて、無数の軍隊が凱旋門の前で行進するCG映像も作成されています。

2009年6月、マイケルが突然亡くなったあと、一番最初に公開されたリハーサル映像もThey Don’t Care About Usでした。

監督ケニー・オルデガの指示でゆっくりと暗転する直前、マイケルは幸せそうな微笑みを浮かべます。

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楽曲の発表から10年以上経過していた当時でも、マイケルがこの曲に対して特別な思い入れを持っていたことが想像できます。

まとめ

マイケルジャクソンの「They Don’t Care About Us」のサウンド、メッセージ、作曲の背景、ミュージックビデオ、ライブパフォーマンスについて解説しました。

  • They Don’t Care About Usは、不当に扱われて傷ついている人たちの怒りを表現している
  • 「警察による有色人種への暴力」を象徴するロドニー・キング事件にインスパイアされたと言われている
  • 1993年に浮上した「児童性的虐待疑惑」でマイケルが感じた怒りが強く反映されている。
  • ブラジルバージョンのミュージックビデオは、「美しい街の風景」「伸び伸びと踊るマイケル」「Olodumメンバーを始めとした現地の人々のエネルギー」が感じられる
  • 監獄バージョンのミュージックビデオは、曲のメッセージをダイレクトに表現したシリアスな映像
  • ライブパフォーマンスは、偏見・差別と戦っていくマイケルの決意を感じる
あおあり
あおあり

この曲を知らなかった人も、何度も聞いてマイケルの声に耳を傾けてください♪

参考資料

1990年生まれ。マイケルファン歴20年ほど。
もはや彼が脳内に住んでいる。
NHK BSのテレビ番組「熱中夜話 マイケルジャクソンナイト」にファンの1人として出演した経歴あり。
ファンの方も、そうでない方も楽しんでもらえる記事を書きたいです。

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