Black Or Whiteの解説

このページではBlack Or Whiteの音楽、ミュージックビデオ、ダンス、衣装などについて解説していきます。

軽快なギターサウンドにマイケルの澄んだ声が映える、爽やかでキャッチーな曲です。

ロック、ポップ、ヒップホップが融合したサウンドで、幅広い人気があります。20の国と地域でナンバーワンヒットを放ち、マイケルのシングルの中で一番世界的に成功したシングルです。

ミュージックビデオは1991年11月に世界各国で同時公開されました。ミュージックビデオとしては史上最多の5億人が同時に視聴したと言われています。有名子役のマコーレカルキンとの共演、最新映像技術「モーフィング」の使用、名作映画「雨に唄えば」をオマージュしたダンスシーン、アニメ「シンプソンズ」とのコラボなど見どころ満載です。

明るい曲調とは対象的に、メッセージはシリアスです。歌詞は「自分の恋人が黒人でも白人でも関係ない」というソフトな内容。しかしミュージックビデオでは、差別や偏見に対する激しい怒りと、マイケルがそれらに対して真っ向から立ち向かい、闘う姿勢を示しています。

この曲は、賞賛と同時に多くの誤解と批判を生みました。「マイケルの肌の色がどんどん明るくなっている。白人になりたいのではないか」「黒人でも白人でも関係ないということは、黒人と思われたくないということか」と解釈する人もいました。また、ミュージックビデオの後半のシーンが暴力的で、性的表現が過激という批判が相次ぎ、テレビではほとんど放送されなくなりました。

作曲について

作曲はマイケルです。マイケルと共にこの曲をプロデュースしたBill Bottrell(以下Billと表記)は、ギター演奏やラップなどを担当しており、Black Or Whiteのキーマンです。

印象的なギターリフ

1989年にWestlakeのスタジオで、マイケルがBillの隣でBlack Or Whiteのメロディーをハミングしたのが始まりです。Billはマイケルの歌ったメロディーをギターで演奏しました。

Billが演奏した印象的なギターリフは、「スラッシュ(Guns N’ Rosesというバンドのギタリスト)が演奏した」というデマが世界中で広まっています。日本語のwikipediaでもこのように記載されていますが、誤りです。このデマが広がった背景は、同時期に発表された曲(Give In To Me)でスラッシュと共演していること、スラッシュが著名人であること、その後もマイケルと何度か共演していることが考えられます。

異例のラップ

楽曲が仕上がっていく過程で、二番が終わった後のラップパートについては何も決まらず空白な時期がありました。

Billは、有名な黒人ラッパーを起用するものと信じていました。しかし一向に話が進まないので、Billが仮にラップを作って録音してみました。それを聞いたマイケルは気に入ってそのまま使うと言ったのです。

Billはラッパーではないので、「とんでもない。プロのラッパーに頼むべき」と反対しましたが、マイケルは聞き入れず、このまま押し切りました。

ラッパーは”LTB“というニックネームで表記され、長い間正体が隠されていました。

マイケルがこの選択をした理由は、単にBillのラップがかっこよかっただけではないと考えます。「有名な黒人ラッパーとタッグする」というお決まりパターンにとらわれず、この曲をよく理解してくれているBillの声を入れるのが一番と思ったのかもしれません。また、白人でラップ経験のないBillを大々的に起用することで、ラップ=黒人というステレオタイプに反抗できると思ったのかもしれません。「黒でも白でも関係ない」という曲のメッセージにもよく合致します。

命懸けのメッセージ

「人種差別は間違っている」という考えは現代社会で広く認知されています。そのため、私が最初に聞いた時は「その通りだけど、ありきたりだな」と感じました。しかし実際は、世界中に影響力をもつ黒人のマイケルが、アメリカでこの曲を発表するのはとても勇気がいる命懸けの挑戦でした。

Black Or Whiteの後半に、“I ain’t scared of no sheets” という歌詞があります。“sheets”とはKKK(Ku Klux Klan)の暗喩です。彼らは北方系の白人が他の人種より優れているという思想の元に活動する団体です。

日本とは異なり、アメリカには平気で有色人種に対して差別的な発言や思想を平気で公表する人々が大勢います。このような人々に対抗すると、嫌がらせを受けたり、命の危険すらあります。実際、差別を撤廃するために活動した多くの人物が暗殺されています。

初めて聞いた時は、マイケルがどれだけ勇敢な行動をしていたのかわかりませんでした。今ではこの曲を聞くたびに彼の勇気に感動します。

見落とされがちな歌詞の真意

Black Or Whiteは、一般的に人種差別への抗議を訴える歌だと考えられています。ただ、マイケルのメッセージはそれだけではありません。

直接的な歌詞の内容は「黒人でも白人でも関係ない」ではなく、「マイケルの恋人が黒人でも白人でも、それは重要なことではない」です。マイケルはなぜこのような歌詞を書いたのでしょうか。

マイケルの職業はエンターテイナーであり、天性の才能と、計り知れない努力によって得た技術で世界中の人々を楽しませることが目標です。

さらに、世界中で生じている貧困、差別、戦争、環境破壊などの問題を提起し、より良い世の中にしていきたいという思いで活動しています。

それにも関わらず、世間の人々は「顔が変わっている」「肌の色が変わっている」「白人になろうとしている」「恋愛対象は男性なのか女性なのか」「誰々とデートをしたらしい」「隠し子がいるらしい」など、表面的な話題や根拠のない噂を延々と繰り返す状況でした。

マイケルの内面やメッセージには焦点を当てず、重要でないことばかり取り沙汰されることに対する苛立ちと、彼が本当に伝えたいことに気づいて欲しいという欲求がこの曲には込められています。

ミュージックビデオ

Black Or Whiteのショートフィルムはマイケルを代表する作品です。大まかに以下の4つに分かれた構成です。

1.(曲が始まる前)マコーレカルキンの出演するホームドラマ風の演出

2.(音楽スタート)マイケルと世界各国の人々が出演

3.(曲が終わる)黒豹に化けていたマイケルが音楽なしで激しく踊る

4. シンプソンズのアニメ

後半シーンはマイケルのハイレベルなダンスが見どころですが、「性的かつ暴力的」といった批判を受け、TVではほとんどカットされてしまいました。

インターナショナルでハッピーな前半

歌詞では「黒人と白人」のみ言及されているのに対して、ミュージックビデオでは多彩な文化に触れています。

アフリカ、アジア、インド、中東、ロシア、そして地球全体へ視界が広がっていきます。「性別も人種も関係なく、私たちは同じ人間」というメッセージを感じます。

ラップパートは子供たちのお洋服がとてもおしゃれで、みんなバラバラなようでいて統一感があり、当時のトレンドが感じられます。

終盤で、アップに映った人の顔がどんどん違う人に変わっていくモーフィングのシーンがあります。

嬉しいことに、この中には日本人女性も出演しています。

彼女はユウコ・スミダ・ジャクソンさんと言って、Dangerousツアーでマイケルのバックダンサーとして活躍されました。ポニーテールを揺らして活き活きと踊っていらっしゃいます。

ほとんどTV放送されなかった後半

ハッピーな雰囲気の前半とは対象的に、後半部分ではマイケルの強い怒り、苦しみ、闘志が全面に出ています。目が離せない激しいダンスを披露しており、Bad時代よりもさらにスキルが上がっていることがわかります。

このパートは1950年代の名作映画「雨に唄えば」のオマージュです。

作品中で、主人公が雨の中、楽しそうに歌い踊る代表的なシーンとセットがそっくりです。タップダンスのアイデアもこのシーンから得ていると思われます。

ただし、Black Or Whiteが「雨に唄えば」と大きく異なる点がいくつかあります。

・無音

・ダンスのペースが超速、激しい

・終始シリアスな雰囲気

こういった部分に彼のオリジナリティーが現れています。

本人の謝罪と、追加された落書き

マイケルが動物の本能を表現したこのシーンは、放送直後から「暴力的かつ性的でショッキング」「子供に悪影響」という厳しい非難を受けました。

最終的にマイケル本人とテレビ局がこれに関して謝罪し、テレビ放送でもカットされるという事態になりました。

I deeply regret any pain or hurt that the final segment of ‘Black or White’ has caused children, their parents, or any other viewers

“Black or White”の最後のシーンで、子供たちやその親、他の視聴者たちに苦痛を与えてしまったことを深く反省しています。

マイケルジャクソン本人のコメント

後日、このシーンは別バージョンも作成されました。マイケルが破壊したガラスに人種差別的な落書きが書き加えられたものです。

この編集によって、マイケルがただ街のガラスを破壊し暴れているのでなく、差別や偏見に対して強く怒り、抗議しているという趣旨が伝わりやすくなっています。

公式に発売されているDVD,ブルーレイではオリジナルバージョン、落書きバージョンが混在しています。

メイキングも面白い

“Dangerous The Short Film Collection”というDVDには、Black Or Whiteのビデオに対する世間の反応の記録と、メイキング映像が収録されています。

騎馬隊が登場するシーンや、マイケルが新聞を読んでいる後ろで車が行き交うシーンは合成でなく本物で、迫力が伝わりました。

地球のオブジェの上で黒人と白人の赤ちゃんが遊ぶシーンは、メイキングではアジア系の赤ちゃんも登場します。

「モーフィング」についてエンジニアが解説する場面もあります。今見てもスムーズで完成度の高いパートですが、写っているパソコンがブラウン管でゴツくて、とても動作が重たそうで(笑)時代を感じました。

厳しい批判

Black Or Whiteについて、以下のように厳しく批判する声もありました。

マイケルは白人になろうとしているのか

Black Or Whiteのビデオでは、マイケルの肌の色が明らかに白くなっていることが話題になりました。

「白でも黒でも関係ない」と言っているにもかかわらず、自分は黒人でいるのが嫌だから肌を漂白しているのではないか?という声が大きくなりました。

ラップの最後、“I’m not going to spend my life being the color”というフレーズも、

「自分は有色人種として生きたくない」という意味だと解釈されることもありました。

この件に関して、何年もの間取り上げていましたが、Black Or Whiteが発表されたのとほぼ同じ時期に、インタビューでマイケルが真実を語りました。

そのインタビューは1993年2月にオプラ・ウィンフリーが行ったものです。

オプラは、

・マイケルの肌の色が徐々に明るくなっていること

・多くの人が、「マイケルは黒人であることを嫌って肌を漂白している」と考えていること

をはっきり指摘した上で、本人に真相を尋ねました。

マイケルは

・病気であり、コントロールできないこと

・父から遺伝していること 

・まだらな色になった皮膚を、均一に見えるようメイクしていること

を告白しました。

are you bleaching your skin and is your skin lighter because you don’t like being black?

あなたは肌を漂白しているの?そして、黒人でありたくないから肌が明るくなっているの?

オプラの質問

 I have a skin disorder that destroys the pigmentation of the skin, it’s something that I cannot help. Okay. But when people make up stories that I don’t want to be who I am it hurts me.

僕は皮膚の色素を破壊する皮膚疾患を持っている。それを止めることはできない。みんなが「(マイケルが)自分自身でありたくない」という話を作り上げることに傷ついている。

It’s in my family, my father said it’s on his side.

これは遺伝なんだ。父方の疾患だと言われたよ。

we tried to control it and using make-up evens it out because it makes blotches on my skin

皮膚がまだらになるから、コントロールするために化粧品を使って均一にしようとした。

マイケルの回答(抜粋)

なぜ股間を掴むのか?

マイケルのダンスが性的に過激だという批判も相次ぎました。この件に関しても、オプラのインタビューで語られています。

 so many mothers in my audience have said to please ask you this question. Why do you always grab your crotch?

この番組を見ている母親たちに、質問してほしいと頼まれていることがあるの。なぜあなたはいつも自分の股間を掴むの?

オプラの質問

I think it happens subliminally. When you’re dancing, you know you are just interpreting the music and the sounds and the accompaniment if there’s a driving base, if there’s a cello, if there’s a string, you become the emotion of what that sound is, so if I’m doing a movement and I go bam and I grab myself it’s… it’s the music that compels me to do it,

無意識にしていると思う。踊るときは、曲、音、伴奏を解釈しているんだ。つまりチェロとか、弦楽器の音があれば、それが奏でる情感そのものに自分がなるんだ。だから、僕が踊ってバン!とやって自分自身を掴んだとしても、音楽がそうさせてるだけだよ。

マイケルの回答

つまり「音楽に命じられてやっているだけ。自分の意思ではない。」の一点張りで、全く問題視も反省もしていないようです。

衣装について

一見するとモノトーンでシンプルな衣装ですが、手足のアクセサリーにマイケルのオリジナリティーが光っています。

医療用サポーターをファッションに

マイケルの腕を覆う編み上げのサポーターは、手根幹症候群などの治療に使用されていた補装具を参考にデザインされました。

指のテープ

人差し指、薬指、小指に白いテープが巻かれています。これはSmooth Criminalのショートフィルムで、マイケルの手の動きを際立たせる目的で、Billie Jeanの白い手袋に代わるものとして使われたのが始まりです。

キャッチャーのレッグガード

レッグガードは野球のキャッチャーからインスパイアされたものです。1990年、アルバム「デンジャラス」の制作中に、これを取り入れるアイデアを思いつきました。

野球はポピュラーなスポーツで、多くの人が野球帽をファッションに取り入れているのに、キャッチャーのユニフォームを真似する人はほとんどいないことに目をつけたのです。

その後のヒストリーツアーではさらに派手なゴールドのレッグガードを着用して、アップデートしたスタイルを見せています。

ライブパフォーマンス

マイケルの代表曲なので多くのステージで披露されました。デンジャラスツアー、ヒストリーツアー、1993年スーパーボウルのハーフタイムショー、ソロ活動30周年記念コンサートなどで歌っています。

幻のコンサート”This is it”のリハーサル映像にも収録されていました。

ギタリストが前に出てアピールし、マイケルも観客もノリノリです。ツアーではラップ直前のマイケルのハイジャンプが見どころです。

スーパーボウルのハーフタイムショーでは、しっかりと繋がれた黒人と白人の手を描いた大きな横断幕が映され、強いメッセージを打ち出しています。

ヒストリーツアーでは、マジックを取り入れたドキっとする演出があります。曲の最後に、壁のように高く積み上げられた箱型のスピーカーがマイケルの背後から崩れてきます。

30周年記念ライブでは、有名ギタリストのスラッシュと共演しました。

参考資料

  • マイケルジャクソン全記録 (書籍)
  • King Of Style (書籍)
  • Man In The Music (書籍)
  • Dangerous The Short Film Collection (DVD)
  • The Oprah Winfrey Show (Feb.10.1993) (テレビ番組)
  • Black Or White – Michael Jackson – Who played guitar? | Slash | Bill Bottrell | Tim Pierce (youtube動画)

▼この記事を書いた人
あおあり

1990年生まれ。マイケルジャクソンファン歴20年ほど。
もはやマイケルが脳内に住んでいる。
マイケルの言葉を直接理解したいというモチベーションで英語を勉強し、英検1級、TOEIC960取得。
ファンの方も、ファンじゃない方も楽しんでもらえる記事を書きたいです。

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